お腹を空かせたもう1人の王子 ページ10
｢よし、廊下の掃除終わり！次は部屋の掃除だね。まずはここから…。｣
トントントンとノックする。返事は返ってこないので、きっといないんだろうと思い、｢失礼しま〜す｣と小さな声で言い、扉をゆっくり開けた。
｢ヒェ！？｣
扉の先にいたのは、そう、倒れている人だった。いきなりの事態に頭がショートしそうになるが、意識を保つ。
(い、生きてる…？)
近づいて恐る恐る｢生きてますか〜？｣と言う。すると倒れている人は｢ウゥゥ〜…｣と唸り声を出した。なので、もっともっと近づいて顔の近くでしゃがんでみる。
｢めし…｣
｢めし？｣
言葉を反復すると、ばっと顔を上げた。驚いて目をぎゅっとつぶってしまうが、目を開く。そこには侑と同じような顔の…そう、双子の王子の宮治だった。
｢ん…あんた、見ない顔やな。｣
｢え、あ、あ…さいめいです！今日から本格的にメイドになりました。よろしくお願いします！｣
言い慣れてない名前に突っかかりながらも、ペコリと頭を下げる。｢おう、よろしく。｣と返ってきた。
｢あ、浅井って侑が連れてきたやつか。あいつ、変わったことしおったな〜。絶対普段ならやんないと思う。
…それより浅井。あんたにお願いがある。｣
｢…はい、なんでしょうか…？｣
いきなり真剣な顔になったので、身構える。…重要な話かな？
｢実は朝食がちょっと足らんくて…めしを作ってくれ！｣
｢え、はい…？｣
考えていたことと全く違かったので一気に力が抜ける。なんだ、身構えてすっごくソンした気分だ。
そういえば、聞いたことある。イナリザキ王国の双子の片っぽはメシ好きなのだと。
｢…と、言っても何を作れば？｣
｢おにぎりを作ってくれ。頼む！｣
｢…おにぎり？｣
聞いたことあるような、ないような言葉に疑問符をつけて言うと、治王子は信じられないと言わんばかりの顔をした。
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作者名：茉凛 | 作成日時：2022年8月20日 21時
