夜明け、2人 その�� ページ22
｢私も、怖かったことあったよ。家出して、本当にいいのかなって。最近まで、思ってたかな。｣
我ながら臆病で、情けない話だ。でも、そんな私を変えてくれたのは侑達。とっても感謝している。
侑の方をまっすぐ見る。侑も、こっちをまっすぐと見た。不安と期待が入り混じったような、そんな顔をしていた。
｢でも、私ここに来てくれてよかったって思う。確かに、大変なこともたっくさんあるけどさ、後悔は不思議とないんだ。だからさ、無責任なこと言うけど、侑も自分がいいって思う選択をしたらいいと思うよ。｣
空の色が、青とオレンジと紫の絵の具を塗ったみたいになる。いや、それ以上の沢山の色が使われているのかもしれない。その空から登ってくる、明るい太陽。
ちょうど、夜明けが来た。
｢ありがとうな、A。｣
そう笑う顔は、夜明けの空と、ゆっくり登ってくる太陽によく映えた。
…すっごく、綺麗。
｢どういたしまして。｣
釣られて私もはにかんでしまう。朝明けの香りを乗せた風が優しく吹いてきた。
｢…A｣
｢なんですか？｣
｢いや、やっぱなんでもない。｣
｢？｣
侑はそそくさとバルコニーを出ていってしまった。私も、この朝日がとても名残惜しいけど、そろそろ着替えないといけない。
それより、さっきの侑はなんて言おうとしたんだろ？
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◯宮侑
変な感じがする。今までに感じたことのない、言葉にするには簡単そうで、難しい感じ。
さっき俺は、Aに何を言おうとしたんや？…でも、なんとなくわかる。きっとこの感情が関係している。
これも関係するのかはわからんが、Aが最近王宮の色んなやつと仲良くなっとる。
嬉しい反面、すっごく胸騒ぎがする。
(あ〜…調子狂うわ…)
朝日の中のAの笑顔を見て、この笑顔が独り占めできとる優越感と、もっと一緒にいたいって思う独占欲が生まれた。
｢恋」という一文字が頭の中に浮かんだが、首をブンブン振ってそんなものは頭の中から消してしまった。
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作者名：茉凛 | 作成日時：2022年8月20日 21時
