とある騎士団員さん その�� ページ20
(タロウを追いかけて、結構奥まで来たけど…)
路地裏を奥へ奥へと進んでいくほど、街の賑やかな声はどんどん遠のいていく。静かな世界に響くのは、私の足音だけだった。
｢…あんた｣
静かな声に、突然現れた声。いや、もしかしたら緊張しすぎて、向かい側から人が来ていたことに気づいていなかっただけなのかもしれない。
｢はい？｣
｢あんた、第二王女さんやろ？｣
｢なんのことですか。｣
男がバッと被っていたフードを取った。その顔は、あの時、侑と出会った時にいた、男三人衆のリーダーっぽい人だった。
｢ちょっと姿は違うけど、やっぱりそうや。あんたらのせいで、俺は人生台無しなんや！とっととあんたをとっ捕まえて、大儲けしようと思ったのに…。ああ、第二王女はええなぁ。｣
｢…は？｣
なんだか、男の言葉に無性に腹が立つ。グラグラと煮立った湯が、沸騰して溢れ出しそうな、そんな感じ。
｢第二王女はいい？それってどういう意味！？それより、あなたの人生が台無しになったのは私のせいなの！？本当に？人のせいにするのは、あなたがただ、責任逃れしたいだけでしょ！？｣
私の怒鳴り声に男は一瞬怯むが、私の頬に平手打ちをくらわせると、壁のほうまで私を押し、手首を押さえつけられる。男の手には小さなナイフがキラリと光っている。
｢うっさいわあほ！｣
男が手を振り上げて、落とそうとした、その時。
｢はい、ストップ。｣
｢角名さん…！」
角名さんが、男の手首を掴んでいた。男は機嫌悪そうに｢なんやお前｣と、角名さんの手を振り解く。角名さんに向かってナイフを刺そうとするが、またまた腕を掴まれ、そのまま引かれて腹に蹴りを入れられればそのまま気絶してしまった。
｢角名さん、大丈夫ですか？｣
｢ああ、大丈夫や。こいつの回収任せる。｣
後から来た他の騎士団員が男を回収して街の方へと戻っていった。
｢角名さん、ありがとうございます。どうしてここが…？｣
｢任務帰りに浅井がここに入るのが気になって。追いかけてきた。｣
よかった…と安堵していたのも束の間。もしかしたら、男との会話が聞かれていたかもしれない。
｢えっと…｣
｢第二王女って本当？｣
｢え、あ、違いますよ〜あはは…｣
精一杯誤魔化すが、まっすぐ見つめてくる黄緑の瞳がとっても怖かった。
｢じゃ、浅井ちょっと待ってて。｣
｢え、って…わっ！｣
いわゆる、お姫様抱っこをされる。｢え、ちょ！｣と声を出しても、聞こえないふりをされるだけだった。
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作者名：茉凛 | 作成日時：2022年8月20日 21時
