とある騎士団員さん その�� ページ19
｢浅井って侑が連れてきた人か。それにしても侑、浅井が来てから結構変わったと思うよ。｣
｢変わった？｣
｢なんだか表情豊かになったていうか。楽しそう。うるさいのは変わらないけど。｣
｢ふふ｣と笑って、角名さんが言ったことについて考えてみる。表情豊かじゃない侑を想像してみても、なんだかモヤがかかって、消えてしまう。そのぐらい、考えられない。
｢でも、そう言ってもらえるとなんだか嬉しいですね。｣
｢…浅井も表情コロコロ変わるよね。｣
｢そ、そうですか？｣と少し困惑した声を出す。以前のカラスノ王国にいた私は、よくムスッとしていると言われた。でも、角名さんが言うことが本当ならば、私もイナリザキ王国に来て変わっているということなのかもしれない。
｢あ、ごめんなさい！そろそろ仕事に戻らないと。角名さん、楽しかったです。ありがとうございました。｣
｢そっか、俺も楽しかった｣
角名さんは、さっきのぎこちない返事とは全く違う、嬉しそうな声で返事をした。
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数日後。私に買い物の予定が入ったので、街へ出る。
カラスノ王国の街も賑やかだったと思うけど、ここの街はそれの倍ぐらい賑やかだ。
｢お、めいちゃん！今日は何を買いに来たんや？｣
｢あ、これを…｣
メモに書いてあった商品をカウンターに乗せる。すると、店の上の方から、ドタドタと階段から駆け降りてくる音が聞こえてくる。
｢やっぱめいちゃん来てたぁ！声したからわかったわ〜｣
息をはぁはぁ切らしながら嬉しそうな顔をしているのは、ここの店主の奥さん。私はここの常連にいつの間にかなってしまったので、この奥さんとも仲がいい。
｢はい、これサービス！｣
｢え、いいんですか…？｣
手渡されたのは、パン一個。｢いいのいいの！｣と奥さんは高笑いをした。パンを商品と一緒にカゴに入れて、2人に手を振って店を出た。
私には、この頃買い物が終わった後、必ずやることがある。それは…
｢タロウ、元気だった？｣
タロウとは、路地裏で出会った白い子犬だ。
ふわふわとした綿毛みたいな毛は、本当に野良犬かと疑うぐらい綺麗だ。
｢あ、タロウ待ってよ！｣
タロウにもらったパンをあげようとカゴの中を漁っていると、タロウはどこかに消えてしまった。きっと、路地裏の奥に行ってしまったのだろう。少し怖いが、足をすすめた。
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作者名：茉凛 | 作成日時：2022年8月20日 21時
