幼き頃の記憶 ページ16
(今、どこかな…？)
足が悲鳴を上げているのがわかる。心も体も限界が近く、ヘトヘトだ。
当時、12になるかならないかぐらいの時、アオバ王国に家出したことがある。
(ここ、王宮の庭に似てるかも)
私は気付かぬうちにアオバ王国の王宮まで来ていたらしく、そっから無意識にこの入り組んだ庭まで来てしまったらしい。運が良かったのか、ここまで誰にも見つからなかった。
｢誰だ？｣
｢わぁ！？」
突然の人の声に思わず尻もちをついてしまう。その弾みにフードがフワッと外れてしまった。
(どうしよう、どうしよう。バレたかな…)
恐る恐る上を見上げてみると、同い年ぐらいの黒髪の男の子が手を差し伸べていた。その男の子は故郷の方の王宮でみる騎士団の人みたいな訓練服を着ている。
｢大丈夫か？｣
｢はい…｣
手をとって立ち上がる。男の子は私のことを不思議そうに見つめるだけで、何も話してこなかった。
(私のこと、知らないのかな。…あ)
男の子の膝の皮膚の一部が、赤かった。擦り傷だ。血の色を見るに、まだ怪我をして時間は経っていないだろう。
｢傷、大丈夫ですか？｣
｢ん、あぁ。大丈夫だが、救護室がどこだかわからなくなった。｣
｢じゃあまっててください…｣
ゴソゴソとカバンの中を漁る。こんな時のためと念の為にハンカチと消毒液を持ってきていて良かったと心の底から思った。
｢ちょっとしゃがんでてくださいね。｣
そう私が言うと、男の子は素直にしゃがむ。その前に私もしゃがんで、無地のハンカチに消毒液をつけた。
｢しみるかもしれませんが、少し我慢しててください。｣
そのハンカチを男の子の擦り傷の部分にちょんちょんと当てる。
｢いっ…」
｢はい、OKです。」
消毒液のついたハンカチとは違う花柄のハンカチを男の子の膝に巻いて、微笑んだ。
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作者名：茉凛 | 作成日時：2022年8月20日 21時
