双子の王子達 ページ12
(侑、どこ…？)
おにぎりを作り終えた瞬間、バッと調理室を出てしまった。そういえば、治王子にはなんも言っていない。
正直なところ、新聞に載るのは覚悟というか、絶対起こることだろうと思っていた。でも、どんな新聞なのか気になる。
｢あ、侑！｣
｢A！…あ、大丈夫か？｣
そうだった。人がいたらすっごくまずいとあたりを見渡す。幸いなことに、誰もいないようだった。でも、声のボリュームを下げて話す。
｢A、これ。」
侑が手渡してきたのは、新聞。そこには大きな見出しで、“カラスノ王国第二王女、失踪！？”と書いてあり、私の写真がドンっと乗っていた。
もっと詳しく読むと、国王は今日、街中の捜査を自国の騎士団に任せ、見つからなかった場合、同盟国のネコマ王国と、フクロウダニ王国の騎士団にも捜索届を出すことを検討しているらしい。
｢そうよ、あいつはいっつもこうなの。探しているふうに見せて、本当は娘がどこに行こうが気にしないやつなの。…だって、あいつは子供の才能以外どうでもいい人だから…｣
グシャッと音を立てて新聞がくしゃくしゃになる。怒りと憎しみで心がぐちゃぐちゃになりそうだ。
｢A大丈夫や、だって｣
｢なぁ、侑と浅井やろ？なんや、Aって。｣
侑の言葉を遮って聞こえてきたのは、物陰から姿を現した治だった。
｢それじゃまるで、浅井がカラスノ王国の王女みたいやろ？｣
｢…治、いつからそこにいたんや？｣
｢浅井が慌てて調理室出ていきおったから、気になって追っかけて…だから、浅井が侑のことを呼んだ時からや。そっと隠れてずっと聞いとった。なぁ、浅井。ほんまにそうなんか？｣
なんだか、辛いなぁ。裏切るみたいで。すっごく罪悪感がある。
髪をほどいて、ゆっくりメガネを取った。
｢浅井めいなんて人はいません。私は…私は、朝露Aです。｣
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作者名：茉凛 | 作成日時：2022年8月20日 21時
