お腹を空かせたもう1人の王子 その�� ページ11
｢え、おま、おにぎり知らんの…？｣
｢…いや、本で読んだことあります！｣
記憶を巡って出てきたのがこれだ。確か、お米の中になんかの具を入れて作る食べ物…だった気がする。
｢で、作ったことは？｣
｢ない、です…｣
作ったことのない自分になんだかガッカリする。姉よりは世間を知っているつもりだったけれども、私もまだまだのようだ。
｢まぁ…簡単やし、わかんないことがあったら俺に聞いてや。ほな、調理場行くで。｣
｢…あ、はい！｣
一緒に行くとは思っていなかったので、少し反応が遅れる。いつのまにか立ち上がっていた治王子の後に続いた。
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｢あ、あの…治王子？｣
｢ん？なんや？｣
｢すっっっっごく近くありません？｣
現在、おにぎりを3つ作ってと言われたので、その2つ目に取り掛かっているところだ。
でも、どうにもさっきから治王子の距離が近い気がする。てか、真横にいる。
(…あ、ちょっと形崩れた。直そ。)
｢いや、浅井の目綺麗やなぁ〜って。｣
｢…え？えぇ！？｣
いきなり綺麗と言われ、顔に熱が集中していくのがわかる。なんせ、容姿なんて美人の姉がいたから、褒められたことすらないのだ。
｢なんかな、カラスノ王国の王女に似てる気ぃするわ。｣
｢え！？…あ、あぁ。カラスノ王国の…第一王女様、すっごくお綺麗ですもんね。｣
一瞬、私のことかと色んな意味でドキッとしたが、そんなことは無いとすぐにそんな考えは無くなった。
そうだ、そうだよ。私のことなはずない。でも、すっごくズキズキと胸の辺りがさっきから痛む。
｢ちゃう、第二王女の方や。白黒の写真でしか見たことないけど、目が透き通ってて綺麗やなぁって覚えとる。そや、今日の朝刊にも出とったな。｣
｢あ、ありがとうございます…｣
｢なんで浅井が感謝しとるんや」
と、笑いながらツッコまれた。さっきのズキズキした痛みなんて消え去って、嬉しさと恥ずかしさが入れ乱れる。
…まって、さっき、今日の朝刊って言ってた？
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作者名：茉凛 | 作成日時：2022年8月20日 21時
