37話 ページ39
俺は足早に部屋を後にし出掛ける事を志季に一応伝えてから出ていく。
貰った鍵をぎゅっと握り締めAの家まで走る。
走って10分足らずで着く距離。
Aの家まで着けば持っていた鍵でオートロックを解除し彼女の自宅まで向かう。
玄関の鍵とドアを開け部屋の中へ入る、来るのはこれで2回目だ。
リビングの電気は消えていて誰もいなかった。
寝室だろうかと思いそちらに向かうもいない。
…もう一つの部屋の戸の前で止まりノックをするが返事はなく、そーっと部屋の戸を開け中を見ればヘッドホンをつけパソコンを弄るAがいた。
ブツブツと声が聞こえる。
後ろに立ち様子を見るが俺の存在に気がついていないのか尚も何かを呟いている。
歌詞かなにかだろうか?
翼「Aー。来たよー」
恐らく聞こえないだろうと思いつつ声をかければ、予想通り返事は返ってこなかった。
ヒョイっと顔を覗き込んで見ると目を瞑り眉間に皺を寄せ考え込んでいる様子のA。
少しの間監察。
うわ…まつ毛長い。こうして見ると鼻筋も通ってるし肌もきめ細かいし、やっぱり女優ってだけあって違うなぁ…とかそんな事を思っていたら急にAの瞼が開く。
俺と目が合い驚いたようにぱちくりさせるも直ぐにいつものような無表情になる。
耳を塞いでいたヘッドホンを外せば本当に来たのかと言われた。
翼「やっぱり年明け初めに顔みたいし?明けましておめでとう、今年もよろしくね?」
「あけおめです。先輩には申し訳ないんですけど多分あんまり構ってあげられないかと…」
チラリとノートパソコンに視線を送れば申し訳なさそうに眉尻を下げる。
分かっててきたのだから別に問題は無い。
笑いながら頭を撫でれば視線を下ろしたりまた上げたりを繰り返す。
どうしたのか聞こうと口を開きかけたと同時に抱きついてくる。
「本音言うと、その…会いたかったから…顔見れて嬉しい。来てくれてありがとうございます」
翼「どう、致しまして…。んもうっ!可愛すぎなんですけど!」
ついさっき構ってあげられないと言われたが然し、これは萌える…!
Aの行動や言葉にキュンキュンしていたら体を離されじっと見つめられる。
頬を赤く染め甘えるかのようなそんな表情。
翼「A…キス、してい?」
Aの頬を撫でるように触ればピクリと擽ったそうに身動ぐも俺の言葉に抵抗することなく目を瞑る。
そして俺達は年明けて初めてのキスを交わした。
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作者名:るーこ | 作成日時:2018年8月14日 15時