33話 ページ35
口付けを交わした後Aはじーっと俺の顔を見てからいきなり笑い出した。
照れ隠しの笑い方ではないのでなんだろうと思い首を傾げると寝癖がついているからと鏡を見てくるよう言われる。
言われた通り洗面所に行けば鏡に映る自分の顔に驚く。
マジックで落書きされていた…。
翼「もー…ホント勘弁して。せっかくのイケメンお兄さん翼くんの顔が台無しじゃん」
落書きを落としてからもブツブツ文句を言っていれば機嫌直しの為か頭をよしよしと撫でられる。
嬉しくないわけではないが、それでもまだ拗ねた顔を続ければAの顔が近付いてきて…。
チュッとリップ音と共に頬にキスされた。
「すみません。機嫌直して下さい」
キスをされたら仕方ない。
許してあげようと苦笑いを浮かべる彼女に言えば軽くお礼を言われる。
そんなこんなでAとのラブラブイチャイチャ恋人生活は幕を開けた。
「今日はCM撮影と打ち合わせが何件かあるので、そろそろ行きますね。鍵、一つしかないので家出る時は掛けて…下のポストに入れてください」
翼「んー。ちなみにさ、まだ眠いんだけど暫く居てもいい?」
「えっと…まぁ、はい。お好きにどうぞ」
せっかくAの家に来れたんだし、もう暫く居たい。というか…眠いのは本当だし眠りたい。
自分の家で寝るのも悪くないがやはり好きな子のベッドで眠れた方が気分がいい。
翼「じゃあこれ、鍵」
「…渡したら帰れなくなりますよ?」
翼「おかえりって迎えてから帰るよ。ほらほら、行ってらっしゃい!」
まだ何時に帰れるか分からないから留守番をさせる訳にいかないと渋るAの背を強引に押す。
男の俺の力に叶うはずもなく玄関まで連れて行かれれば困惑した顔で俺を見つめるA。
仕事で出掛ける彼女に鍵を託し、外に送り出してから俺は再び寝室へと向かう。
ベッドに寝転んでいれば携帯が鳴る。
Aからだった。
カップラーメンか冷凍のピラフや炒飯、パンなら台所にあるから適当に食べるようにという内容だった。
文面が申し訳なさそうな顔文字付きだったので微笑ましく思う。
いきなり泊まるのが決定したし留守番するのも急だったので仕方ない事だ。
大丈夫だから気にしないようにという返事を送ってからスタンプを送る。
少しの間やり取りをしていたら返事がこなくなったので多分撮影が始まったのだろう。
俺はベッドに潜り込みAの匂いのする布団を被り再び眠りに落ちた。
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作者名:るーこ | 作成日時:2018年8月14日 15時