29話 ページ31
仕事の話や学校での出来事、趣味や好みの話…色んな話をしていたら次第にAが眠そうにウトウトしてくる。
時計を見れば深夜の1時を回っていた。
荷物を持ち慌てて立ち上がり帰ろうとすれば服が何かに引っかかる感覚。
原因を探ろうと見てみればAが俺の服の裾を掴んでいた。
彼女の名前を呼びかけても俯いているだけで反応がない。
というより、離してもらおうとお願いしたら更に服を掴まれる。
翼「Aちゃーん?あんま引き止められるとさ、泊まって行っちゃおうかなーとか…思っちゃうよ?」
俺の問いかけに漸く顔を上げ首を縦に振り、声は出さず口元が動く。
いいよ、って…言ったみたいで…
翼「え、……まじ?」
驚いた顔をしながら聞いてみたら2回ほど服を引っ張られ、かなり小さい声で言葉を発する。しかも上目遣いだ。
「一緒にいてほしい…」
心臓を撃ち抜かれた感覚。彼女の甘えたような声色に一人だったら転げ回っていたと思う。
それくらいの破壊力だ。
俺が泊まることに決めれば安堵したように口元を緩める。
先に風呂に入っていいと言われたので脱衣場に向かう。
泊めてもらうことになったはいいが着替えがない、どうしようかと考えていると脱衣場の外から声をかけられる。
「携帯、鳴ってます」
脱衣場の扉を少しだけ開け差し出された携帯を受け取る。
里津花からだった。
翼「もしもし、里津花?どうしたの?」
里「どうしたの?じゃないよ。遅いから連絡したんだけど……もしかしてまだAちゃんと一緒?」
翼「ピンポーン!で…さ、今日泊まってくことになったから良かったら着替え持ってきてくんない?」
里「泊まってくって……」
俺の言葉を聞いて察したらしい里津花がため息混じりに続ける。
里「とりあえず持っていくけど…くれぐれもスキャンダルには気をつけてね」
里津花は渋々といった感じだったが服を届けてくれることになった。
風呂に入って数10分後、脱衣場にAの影が映る。
「着替え、ここ置いときますね。タオルはうちのですけど…使って下さい」
それだけ言うと直ぐに出ていく。
湯船に浸かり温まった体が冷める前に風呂場を出る。
ふわふわした触り心地の良いタオル。
体や頭を拭いている最中にAの家で使っているであろう柔軟剤の匂いが鼻を刺激する。
髪を拭いている時にふと気付いたが、Aと同じシャンプーの匂いなのかと思ったら胸がキュンとなった。
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作者名:るーこ | 作成日時:2018年8月14日 15時