24話 ページ26
ーA視点ー
先輩に余裕たっぷりの笑みを向けてからベランダから部屋へと戻る。
私が部屋に戻った時には里津花さんが志季さんの隣でウーロン茶を飲みながらおつまみを食べていた。
里「…酔いを覚ましに行ったんだよね?大丈夫?まだ顔赤いけど…」
私の顔を見るなり私を心配するような言葉をかけてくれるが今は触れてほしくなかったので手で制す。
里津花さんの前には相変わらず机に顔を伏せながら、でも片手にはしっかり水の入ったグラスを持っている大くん。
私が席に座ったのを確認してはアルコールを勧めてくる志季さん。
手際よくグラスに焼酎と炭酸水、絞り機で絞ったレモン果汁をいれ私に差し出す。
志「レモンで良かったよな?飲むか?ていうか飲め!」
酔い自体は結構覚めているし、せっかく作ってくれたんだし…と思いつつお酒を受け取りそれで喉を潤す。
里「翼はまだベランダだよね?あまり長く居たら風邪ひいちゃうかもしれないし…ちょっと呼んでくるね」
先輩を呼びに行こうとする里津花さんを止めそうになったが、今ここで止めたら変に思われるかもと思い直しては言葉を飲み込む。
ベランダへと向かう里津花さんを見送りつつお酒を飲み進め、先輩が帰ってきたらどんな顔をしたらいいだろうかと考える。
里津花さんがベランダに出てすぐ大くんが立ち上がる。
大「限界。悪い…もう寝るわ」
「あ、じゃあ私もちょっと…トイレ!」
部屋へと向かおうとする大くんに釣られたように立ち上がればトイレに逃げ込もうと考えた。
里津花さんが先輩を連れて戻ってくる前に自分なりに答えを出さなければ…。
トイレに入っては鍵をかけ壁に寄り掛かるようにして床に座り込む。
…やってしまった。完全にやらかした。
彼への気持ちが溢れ出てしまい、気付いた時には唇を奪っていた。
過去の事を完全に忘れられるとは思わないけど…先輩とならもしかしたら乗り越えられるかもしれない。
今まで自分に好意を抱いてくれた人は少なからずいたと思う。
でも、私自身好きにならなかったし…付き合いたいとも思わなかった。
誰かと付き合ったらいつかはまた騒ぎになる。
付き合っている人の迷惑になるなら初めから誰とも付き合わない。復帰した時にそう決意した。
決意した筈だったのに…先輩に惹かれ、彼もまた同じ気持ちだと知り揺らいでいる。
……好きだ…奥井先輩が、好き。
だから、過去に囚われるのは…もうやめよう。前を、向こう。
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作者名:るーこ | 作成日時:2018年8月14日 15時