22話 ページ24
Aは作り笑顔を浮かべ話も終わったからと離れようとする。
涙は流れていない、けど心の中で泣いているような気がして…俺は思わずその腕を引き寄せ再び抱きしめる。
「…はなして、同情とかならいらない」
翼「寒いから離したくないだけ」
離れようと胸元を押すAを寒いからと理由を告げ俺は痛くない程度に更に腕の力を強める。
翼「さみぃ…寒すぎて涙出そー」
Aは観念したように抵抗をやめ代わりに俺の服を掴む。
次第に、声を殺したようなか細い鳴き声が聞こえてきたが俺は明るい口調で零す。
翼「冬ってさ、人肌恋しくなるんだよねー。だから、今こうしてギューってさせてくれる人がいて良かった」
空を見上げながら優しくAの髪を撫でる。
少しだけそのままでいたが俺の胸で静かに涙を流していたAが小さく息を吐きゴソゴソ動き始める。
ポケットからタオルを取り出しては俯きながら目元を拭いているのがわかった。
顔を背け見ないようにしてあげたのだが…突然大きな爆発音が聞こえてきたので飛び跳ねる。
何事かと心臓がびっくりしつつ音のする方に視線を向けると…真顔でピースサインをしているA、片手に空いたクラッカー。
先程持って帰ると言っていたクラッカーだ。
俺の驚いた顔を見ては噴き出したように笑いだすA。
「ぷっ……くくっ…あはははっ!つばち、かお!顔やばい!驚きすぎっ!」
翼「なっ…なんっ、だって仕方ないじゃん!笑うなー!なんなのもうっ!せっかく人が気ぃ遣ってあげたのに…っ!」
お腹を抑えゲラゲラ笑いだすAに抗議の声をあげようとしたが、背伸びをしたAの人差し指が俺の唇に触れる。
その仕草は…まるで静かにするようにと言いたげで。
翼「あのですねぇ…」
散々笑っていた人物が何を…って言おうとしたんだけど…それすらさせてくれず。
Aの冷えた掌が俺の両頬を包みぐいっと引き寄せられ、彼女との距離が0cmになった。
軽く触れるだけのキス。
一瞬の出来事で何が起こったのか理解出来なかった。
…Aの顔を見るとなんだか満足そうに微笑んでいた。
驚きと戸惑いと恥ずかしさと嬉しさと…で、いろんな感情が一気に溢れ出しては多分変な顔になっていたと思う。
「…クリスマスプレゼント。顔、直ってから部屋にもどっておいで?」
俺を指差しては可笑しな顔になっていると指摘し、部屋に先に戻っていく彼女の姿をただ呆然と見送るしか出来なかった。
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作者名:るーこ | 作成日時:2018年8月14日 15時