12話 ページ13
ーA視点ー
彼のお母さんから連絡がきて、事故に遭ったことを聞いた。
真面目な好青年といった彼は私と別れて以降、人が変わったようにガラの悪い先輩達とつるむようになったらしい。
年齢的にまだ未成年だった彼なのだが周りの人は成人済みだったそうで、よく泊まりやらなんやらと家に帰ってくるのもたまに…と言った感じになっていった。
いつものように夜中にバイクで出かけたらしい彼だがその日の帰る途中、反対車線から向かってくるトラックとぶつかった。
相手側は居眠り運転なのかハッキリとはわからないがかなりのスピードが出ていたらしい。
私はその話を聞いてとてもいたたまれない気持ちになった。
お通夜に来てくれと頼まれたのでそこにも出向いたが、変わり果てた彼の姿を前に涙が止まらなかった。
もしも私が仕事ではなく彼を選んでいたら彼は今も生きていたのかもしれない。
それこそ、今も隣で笑いあっていたのかも…なんて思う。
だから私は…誰かを好きにならないようにと心に決めた。
悲劇のヒロインになるつもりはないが、それでもやはり自分はこの先も一人でいた方がいいのかもしれない、と…彼を思い出す度にそう思う。
仕事と恋愛の両立は難しいし上手くいく保証はないから…恋仲にはならないようにしよう。
そう、思っていたのに…私を好きだと言ってくれた先輩の顔が思い浮かぶ。
男性ボーカルユニット、SolidSのメンバーの一人。
奥井翼。
チャラチャラした見た目と軽いノリが好きではなかったが、彼の歌声を聴いて惹かれた。
社長にそれとなくSolidSの、先輩のことを聞いた。
勝ち負けにこだわらなそうに見えて、実はかなりの負けず嫌いで熱いものを持っているらしい。
軽いというのは当たっているがきっと彼自身本気の恋愛等したことないのだろうとも言っていた。
考え事をしていたらいつの間にか自分のマンションまで来ていた。
鍵を取り出しオートロックを解除しエレベーターに乗り込む。
最上階である18階のボタンを押し、程なくしては目的地の階まで到着し自分の家の前で止まる。
鍵を開け玄関の扉を引いては部屋に入る。
手を洗ってから寝室に入れば鞄を適当な場所へ放り投げ電気もつけずにベッドにダイブ。
ボーッと天井を見上げていたが携帯の着信音がコートの中から聞こえてきたので引っ張り出せばディスプレイには[奥井先輩]の文字。
今さっきまで一緒にいたのに何の用だろうかと考えるも無視は良くないので電話に出る。
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作者名:るーこ | 作成日時:2018年8月14日 15時