11話 ページ12
ーA視点ー
「すみません、今日は帰ります」
寮に連れてきてもらって…お酒を飲んで、告白されて断って、しばらく経ってから私は立ち上がる。
お酒のグラスを空にしてから帰ることを告げれば悲しそうに見つめられた。
奥井先輩から告白されて嬉しかった…。
でも、それよりも昔あった事を思い出し誰かと付き合うことは無理だと悟った。
「また誘って下さい。…先輩が良ければ、ですけど」
務めて明るい口調で言いながら悲しげに見つめてくる彼の頭をくしゃりと撫でる。
撫でていた私の手を先輩が掴み、自分の方へと引き寄せる。
バランスを崩した私は先輩に抱きつくような形になり、慌てて退こうとするがそれをさせまいとぎゅうっと抱きしめられた。
そして静かに耳元で囁かれる。
翼「俺は本気だから。Aが今どんな気持ちでいるのか分からないけど…付き合いたいって思わせてみせる。だから…覚悟してて?」
真剣な眼差しで見つめられ、耳元で言われた事の意味を理解する前に額にチュッと口付けされた。
その後に腕を解放され改めて立ち上がり部屋を出ていこうとすれば引き止められる。
不思議そうに見つめればその手には先輩カラーの小さなリスのぬいぐるみ。
翼「俺だと思って持って帰って?」
暫く受け取らなかったらかなり不満そうに見られたので仕方なくそれを受け取る。
そして再び先輩に背を向け部屋を出ようとすれば送って行くと言われたので丁重にお断りした。
自宅への道を歩いている中、思い出していた。
高校生の時にあった出来事を。
あれは、私が今よりまだ有名ではなかった時の話。
高校に通いながら女優として活動していた。
その時の私には恋人がいた。同い年の、一般男子生徒。
高校二年の時に付き合って、バレないように付き合っていたがその一年後…記者にバレるという自体に陥る。
私はもちろん、彼も質問攻めにあっていた。
家にまでついてこられ、しつこく追い回されていた彼は次第に不登校になってしまった。
運動系の部活をしていた彼だったが、これが原因で部活も退部。
騒ぎが大きくなればなるほど仕事をとるか恋愛をとるかのどちらかしか選択の余地はなかった。
女優になるのが幼い頃からの夢だった私は仕事をとり、彼とは別れたのだが…顔を合わせると辛いので私は転校した。
彼と別れて…私の熱愛も収まりかけた頃、一つの電話がかかってきた。
彼が、亡くなったと。
バイクで事故にあったそうだ。
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作者名:るーこ | 作成日時:2018年8月14日 15時