●苦味12% ページ14
浅野君は黙った儘、私を見据える。そして、僕は、と口を開いた。
「確かに無理をしているのかもしれない。でも、それが君に何の関係がある?」
そう来たか……思いの外遣るねぇ、浅野君。
「関係有るとか無いとかじゃなくて、唯単に、浅野君に興味が有るからってだけじゃ駄目なの?」
うわぁ〜。こんなんじゃ、貴方に気が有りますって云ってる様なものじゃない。
「……そう尋ねられたら否定しにくいだろう。それに、僕も伊藤さんには興味がある」
「私なんかに興味を持っても、利益は無いよ?」
「それを言ったら伊藤さんもじゃないか」
浅野君の言葉に、確かにそうだね、と嗤ってみせた。彼が私を意識しているのは、此方としては善い傾向だ。事を進めやすい。
「まぁ、無理をしている云々は於いといて……胡散臭い笑顔はしなくて善いよ、私の前ではね」
「……よく分かったな」
「(あれ、すんなり認めるんだ。)…私、人の顔色を伺う生活してるから」
云って、我に返る演技をする。そんな私を浅野君は訝しげに見る。
「まぁ、深く追求する気は無い」
「善かった」
微笑み返すと、浅野君は溜息を吐いた。そして、僕もまだまだだな、と呟いた。
「初対面の君にバレるなんて……」
「え、ご、ごめん……」
「いや、別にもういい。ただ、内密にして欲しい。色々面倒だからね」
「あ、じゃあ、一つだけ条件が有るんだけど……」
善いかな?、と訊ねると、僕が出来る事で頼むよ、と浅野君は少々疲れ気味に答えた。私の条件なんて簡単で、誰でも叶えられる。そして、私の計画を進めるのにもってこいだ。
「私と仲良くしてくれないかな……?」
「は?」
素っ頓狂な声で云われた。そんなに予想外だったのか?
「私、余り人と喋るの得意じゃないから……その、親しい人も居ないの」
「まぁ大人しいからね、君。でも、そんな事でいいのか?」
「うん」
「……分かった」
「有り難う…!」
礼を言われるほどの事じゃないよ、と浅野君は軽く手を振った。そして、止めていた足を再び動かした。彼に付いて行く様に私も歩き出す。
教室へ戻れば誰も居らず、静まり返っていた。そんな中、浅野君の声がやけに響いた。
「一緒に帰るか?」
私は大きく頷いた。
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バンビ(プロフ) - ちっぺさん» コメントありがとうございます!!そう言って頂けて、嬉しい限りです!表現の仕方面白くて思わず笑っちゃいましたww更新頑張ります! (2017年5月17日 2時) (レス) id: fcb4695207 (このIDを非表示/違反報告)
ヲタク様(プロフ) - ちっぺさん» ありがとうございます!楽しみにして下さっている方がいるのが分かり、凄く嬉しいです!脱スランプになり早く更新するようにします! (2017年5月16日 20時) (レス) id: 110a1a14b8 (このIDを非表示/違反報告)
ちっぺ(プロフ) - この小説とても好みで面白いです。更新がんばってください、更新されたらば私は舞い上がって馬の上でコサックダンスを踊り出してしまうかもしれないぐらい好きです(^ω^) (2017年5月16日 17時) (レス) id: 74c0eac0d3 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - のんのさん» コメントありがとうございます!!そう言って下さり、嬉しい限りです!しかも応援まで…!これからも頑張ります! (2017年4月10日 2時) (レス) id: fcb4695207 (このIDを非表示/違反報告)
ヲタク様(プロフ) - のんのさん» コメントありがとうございます!これからも楽しんでいただけるよう、頑張ります! (2017年4月9日 22時) (レス) id: 12cd453bfc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヲタク様 バンビ x他2人 | 作成日時:2017年3月30日 19時