逆ハーは別に狙ってない！！！【東リベ】

予兆.7 ページ36

『思ったより痛いねぇ』


なんて呑気に言ってみるが実際は痛くて手から力を上手く抜けない


『パーちん。刺すのはダメだよぉ。どんなに憎くても、喧嘩の域を超えたらそれは犯罪になっちゃう。そんなのは覚悟じゃない』


その言葉にハッとしたように息を飲んで俯いてしまう


『っ！！』


歯を食いしばってナイフを地面に投げ捨てる


マ｢Aっ....｣


逃げかけていた場所から私のところまで戻ってきて血の止まらない手をそっと支えるマイキー


サイレンの音が近づく


『パーちん逃げるよー』


笑顔でマイキーに握られていない右手を差し出す


痛みで叫び出したいのを堪えてわざとらしいほどゆったり話す


それでも俯いて手を取らないパーちん


マ｢パー....｣


どんどん近づいてくるサイレンに焦る


ぺ｢パーちん！！！！｣


遠くからぺーやんが名前を呼んでもなかなか俯かせた顔をあげず何も言わないパーちん


痺れを切らして無理やりパーちんの手を取る


呆然とするパーちんはすんなり引き上げられる力に従って着いてきた


良かった


抵抗しないことに安心して痛みを我慢しながら走る


工場を出る直前に愛美愛主の何人かが警察に取り押さえられるのが見えた


ギリギリだかなんとか抜け出し、しばらく走る


裏路地の狭い道をみんなで駆け抜ける中、後ろで倒れる音がする


『タケミッちっ』


タケミチが倒れ込んでしまった


そりゃパーちんにも殴られ、長内にも殴られ、これだけ走れば限界も来るだろう


サイレンはもう聞こえない


マ｢くそっ....｣


『救急車だと目立つから担いで行こう』


額に伝う冷や汗を拭いながら提案する


龍｢もう少し奥に行きゃあ病院がある｣


ドラケンがタケミチを担いで再び走り出そうとするが、パーちんの手を握っていないことに気づく


『パーちん....？』


振り向くと座り込んでしまっているパーちん


そこへ戻ってしゃがみこみ、パーちんと目線を合わせる


『パーちん？』


パ｢おれ....ごめん....｣


涙で顔を濡らし、子供のように泣きじゃくる


『ごめんよりありがとうが良いなぁ』


笑ってそう言えば、やっと顔を上げるパーちん


『刺そうとしたこと、後悔してる？』


真剣な目でそう聞けば小さく頷くパーちん


殺してやりたいほど憎い相手を目の前にして冷静でいられる方がおかしい


視野が狭くなった時、止めるために仲間がそばにいる


後悔してるならもう追い打ちを掛けてまで長内に復讐することも無いだろう

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