逆ハーは別に狙ってない！【東リベ】

一虎と場地.3 ページ37

虎｢帰ろう｣


私の様子がおかしいことに気づいた一虎の言葉に、黙って頷いた


引かれていた手が離れ、何となく悲しくなってしまった


帰り道は互いに無言だった


一虎は何も言わず家まで送ってくれ、帰り際に頭に手を乗せて撫でながら言った


虎｢何に悩んでるのか知らねぇけど。言えよ。みんな心配する｣


『うん。ありがとうかずくん』


｢じゃあな｣と、一虎は帰って行った


それを見送って再びバイクに跨ると、反対方向に走り出す


しばらく迷いながら走る


『あった』


何となく見覚えのある店の前につく


ウィンドウから見えるそれはバブだ


店の近くにバイクを止め、恐る恐るを覗き込み、扉に手をかける


カランと音を立てて入口の扉が開く


そっと扉を閉じてバブに近寄る


『これがあのバブか....』


確かにマイキーがこれに乗っている姿はとても妖艶で闇に溶ける王の姿を彷彿とさせた


かっこいいよ


凄くかっこよかった


でもね、かずくん。それは盗んだバイクじゃダメなんだよ


そっとバブのサドルを撫でる


？｢悪りぃね。譲ちゃん。それ売りもんじゃねぇんだ｣


後ろから突然の声に振り向く


そこには黒髪に長身の男性がタバコをくわえながら立っていた


目元がマイキーによく似ている


真一郎さんだ


『あの、これ』


真｢譲ちゃん、バイク好きなの？｣


真一郎さんは目線を合わせるようにしゃがむ


こくん、と頷くと頭をくしゃくしゃっと撫でられる


真｢俺の弟がさ、バブに乗りたいって言うんだよな｣


"これ"とバブを指さす


真｢だからこれは売れないんだ。わりぃ｣


困ったように笑う真一郎さん


『たまに、見に来ても良いですか』


そう問うと｢いいよ｣と返ってきた


真｢もうすぐ弟の誕生日だからそれまでになっちまうけどな｣


『お店、何時までやってますか』


真｢大体20時には閉めちまうな｣


『ありがとうございました』


真一郎さんに頭を下げてお店を出るとすぐにバイクに跨って家に帰る


夜にまた来よう


今日から張り込んでいればいつか来るはずだ


絶対に止める


真一郎さんを殺させない


その日から店が閉まる少し前に店が見える死角に隠れ、朝方まで張り込んだ


数日もすれば早く来いとすら思う


何時くらいに決行したか忘れてしまった私が悪いのだが


肌寒い朝方に、この時期には合わない長袖の厚手のパーカーに軽食と飲み物を片手に2人を待つ日々が続いた


そしてその日がやっと来た

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