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智は専門書の棚に書籍を並べながら
あっと思いだしてクルリと踵を返した。
「あのサラリーマン風のおっちゃん、あの子の父親だ」
智は使用済み食器類の返却棚から引き上げようとした雅紀へ声をかけた。
「あの子って、二日前の迷子の子の？」
「うん、そうそう！」
「本当かよ、スーツの男ってその子の父親って
サラリーマンじゃなくて自営業じゃないの？」
「…うん、そのはずなんだけどさ」
２人の会話にすっと入る和也。
「おーい、雅紀、食器！」
「あっ、ごめん松潤、今もってく」
そういって雅紀はその場から離れて
キッチンカウンターから顔を出す
潤のほうへ歩いていく。
「アンタがそこまで言うんなら、その父親なんかね？」
「うん、ちょっと気になるからまた来たら合図するわ」
「わかった…、しかし今日は暇だなぁ」
和也がマジック用のトランプを慣れた手つきで
切りながらぼやいた。
「そうだ、今度おっさん来た時にお前の
マジックでちょっと引き延ばしてくれよ。
身の上話を聞きながらさ」
「んー、いいけどアンタもボサっとしてないで
ちゃんと同席してよね」
「わーったよ」
話がついたと思ったのか、猫背のまま智は
歩いて控室に消えて言った。
和也はトランプを切りながら考え事をしてい
ると、２人の女子高生が目の前に来て恥ずかしそうにチラチラと和也を見た。
「可愛いお嬢様たち、マジック見て行かない？」
効果音が聞こえてきそうな爽やかな笑みを浮かべて彼女たちを迎える。
「いいんですか？お願いしまーす！」
互いに顔を赤く染めながら２人が椅子に座る。
それを少し距離をおいたところから
見ていた雅紀が
「またアイツ、カッコつけて女の子にキャキャ言われてるよ」
「１００％成功させるから大したもんだよな？」
とニヤニヤしながら潤と雅紀は一緒にアイスコーヒーをグラスに注いでいた。
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作者名：翔華
| 作成日時：2018年3月30日 23時
