８７ ページ41
「おいらはね、被害が絵で良かった
と思ってるし、安心したんだ」
と言って俺を見て微笑んだんだ。
「安心て…どういう意味？」
俺は驚いてカップを置いた。
「あ、ごめん。安心てのはこんな時に不謹慎か」
そういって智くんもカップを置いた。
「おいらさ、絵が盗まれたって聞いた時、
一番にガッカリしなかったんだ。
その代わりに、翔ちゃんの身が心配だった。
危害を加えられなかったか、絵よりも店の売上金よりも
翔ちゃんが心配だった」
「さ…としくん…俺は貴方の大切は絵を…」
鼻の奥がツンと痛くなって視界がまた
滲んで歪んだ。
今度はとめどなく涙が溢れた。
「おいらさ、もしね。絵が盗まれたと知った時
自分が一番に絵の事考えるような奴だったら
自分で自分をぶん殴ってたかも」
「……っ」
俺が口を開きかけたところで
「続き、聞いて」
「う、うん…」
さらに智くんは続けた。
「もし、そんな奴だったらおいらは
翔ちゃんには不要だし、釣り合わないって思った。
そんな資格ないって。違った、俺はちゃんと
翔ちゃんが一番だったんだって安心したんだ」
もうダメだった。
俺の涙腺が完全崩壊した。
自分の意志ではコントロールなんてできなくて。
「もう、今日泣いてばっかだぞ…
おいらは、翔ちゃんの笑顔が好きなんだから」
智くんは立ち上がって俺に近づいて
抱きしめて背中をトントンと撫でた。
まるでプロポーズを受けた彼女みたいに
俺は泣いた。涸れることなくずっと。
なんでこんなに寛大なんだろう。
俺にそんな優しさを与えてくれる。
ものすごい癒されるオーラを纏った智くんに
俺は命一杯甘えてる…。いいのかな？
飲み終わったカップを下げる頃には
漸く俺も落ち着きを取り戻した。
今日はいつになく、智くんはよく
しゃべってくれた。
「翔ちゃん、また明日行くぞ！
店はしばらく休んでさ、ゆっくりしよう」
「え、どこにいくの？」
「絵を描きにいくんだよ。絵なんてまた
いくらでも描けばいいし。一度離れた絵はもうおいらの
じゃない。くれてやるよ！」
智くんはすっきりとした笑顔で
カップを洗う俺の後ろから抱きしめて
くれて、すっと唇に触れた。
照れ笑いしながら、２人で明日の予定を考えたんだ。
※さぁラストスパートです＾＾ もう少しお付き合い下さい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 706人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
翔華(プロフ) - はるさん» はるさん、初めまして、こんにちは。コメント有難うございます！心が広い菩薩の様な智くんを書きたいかったのでそう言ってもらえて嬉しいです＾▽＾もう少しこのお話にお付き合い下さいね！幸せな2人が好きなので♪ (2018年3月29日 13時) (
レス) id: 37eca17cbd (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 翔華さん、こんにちは。更新ありがとうございます！なんて酷いことが！と思ったら智くんのなんて優しく大きいこと！離れた絵はくれてやる！って格好いいです！楽しみにしています。 (2018年3月28日 15時) (レス) id: 2e57ade7fe (このIDを非表示/違反報告)
翔華(プロフ) - satoshiikoさん» コメントありがとうございます！はい、前進あるのみ！ですね♪(*^^*)パワーいただきましたよ、ありがとうございます((o(^∇^)o))色々相談して縁のある会社に行ければなと考えてます！ (2018年2月7日 13時) (レス) id: 5a0dcd6872 (このIDを非表示/違反報告)
satoshiiko(プロフ) - こんはまんは！ 就活、頑張ってください！ きっと翔華さんにとってベストな道が開けるはず。♪前進あるのみ〜♪ (2018年2月6日 21時) (レス) id: 6dba7c15f5 (このIDを非表示/違反報告)
翔華(プロフ) - ショウさん、コメント有難うございます！はい、やっと２人の気持ちが動きました＾＾ やっぱり甘いのが書きたいのでやっとという感じですね。。。これからも和んでもらえるように頑張りますね。有難うございました！ (2017年12月27日 19時) (レス) id: 37eca17cbd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：翔華
| 作成日時：2017年11月6日 13時
