【オリオンの刻印】間違えて日本代表に選ばれちゃった系女子、世界を相手に奮闘する。その２

その６７：一方的なオアシス認定 ページ22

「ボサッとすんな、一星！」

「集中しろよ、一星！ 俺のパスはちっとばかし強烈だぜェッ！！」


「──ぐはッ！」



鬼道が起点と思われる一星への攻撃は、灰崎、ヒロトと立て続けに行われていく。真っ直ぐに軌道を描いたボールが一星の鳩尾へと叩き込まれていく様子は、意図的なものであると捉えてしまえば痛々しい他ない。

そんな見様によっては悲惨とも受け取れる光景を目の当たりにしたほたるは、思わず頰を引きつらせた様子で「笑えねー」と冷や汗をかいた。



「(私のオアシス・ヒロトくんは一体何処(いずこ)へ……！？)」



それはほたるが一方的にそう認定しただけだろう……なんて、野暮なツッコミは置いておくとして。



「(鬼道さん……)」



試合の途中から、鬼道のやり方にどこか蟠りを感じていた様子の稲森。この光景を目の当たりにしたことで、無意識のうちに握った拳にきゅっと力が入っていく。



「(──こんなの、やっぱりサッカーじゃない……！)」



自分の意思に確信を持った時には既に、彼の身体は一星の元へと動いていた。



「これで……トドメだッ！！」

「やめろーッ！！」



膝をつく一星のもとに強く打ち込まれたボールは、一星の前へと庇うように飛び込んだ稲森の身体によって間一髪で阻まれた。

ヴィランの如く浮かべられた灰崎のニヒルな笑みは、あっという間に悔しげな表情に塗り替えられていく。



『──おおっと！ なぜか灰崎のシュートに当たりに行ったようにも見えた稲森、フィールドに倒れたまま動かない！ これは、イナズマジャパンに非常事態発生かーッ！？』



突然の出来事にすっかり静まり返ってしまった会場に響いたのは、実況席からの力強いアナウンスだけだった。



☆



「……テメエ、なんで邪魔しやがった」



応急処置を施され、ベンチの前に拵えられた急造のマットに寝そべる稲森。そんな彼に顔を顰めながら話しかけたのは、他でもない灰崎だった。

稲森は少しの間だけ黙り込むと、意を決したように口を開く。



「……鬼道さん。鬼道さんがチームを守るなら、俺はサッカーを守ります」



真っ直ぐな視線と共に語られたそれに、一星は思わず「どうして僕なんかを庇って……」と口を挟んだ。その姿は、どこか動揺しているようにも見える。



「仲間を傷つけようとするなんて、許せないんだ。サッカーは、誰かを傷つけるためにあるんじゃない……」

「……」



ベンチから腰を上げ、改めて稲森の傍へと歩み寄った一星は、顔を伏せながら「ありがとうございます、明日人くん」とぽつりと呟いたのだった。

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