【オリオンの刻印】間違えて日本代表に選ばれちゃった系女子、世界を相手に奮闘する。その２

その５６：野蛮なことは苦手です ページ11

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試合再開後、フィールドではだんだんと灰崎とヒロトによるラフプレーが目立ち始めつつあった。

ほたるはそれとなくボールを追いかけながらそんな彼らの姿を眺め、「さしづめ鬼道くんの策略ってとこかな」と密かに鬼道の心の内を察する。そして次に彼女の脳裏をよぎったのは、ミーティングが行われたあの日(・・・)の出来事。



“──つまり、この大会は「普通の大会」ではないと？”

“──そういうことになるな”



──言うまでもなく、「司令塔からの協力要請」とほたるが勝手に称したそれ(・・)に関する話には、まだ続きがあったのだ。

ミーティング終了後、鬼道と会話を交わしていくうちに彼の思惑を察すると、ほたるは楽しげに頰を綻ばせた。そこまでは誰もが既に知っている話だと思うが──本題はここからだ。


妖しげな笑みを見せたほたるに、すぐさま鬼道はこう語りかけた。”俺と手を組まないか”、と。

この言い草だとまるで鬼道がほたるに犯罪の片棒を担がせようとしているようだが、実際のところはそのような腹の黒い話ではない。この大会において、鬼道は己の目的を果たすために“ほたるは重要な人物となる”と判断した──ただそれだけの話である。


一体鬼道の目指す“目的”とは、一体何なのか。第三者には到底知り得ないことだが、どうやらそこそこに察しのいいほたるにとっては、そういうわけでもないようで。



「へえ、なんだか面白そうな話だね！ 手を組むってことは──やっぱり、一星くんを潰すつもりで試合に臨まなきゃいけないってことかな？」

「……」



愉快そうに放たれた言葉に、鬼道は何も言い返さなかった。

あくまでも彼は「YES」とも「NO」とも言っていないが、ほたるはその反応を見るなり、心の中で「やっぱりか……」と己の憶測を確信へと変換させる。



「興味深い話ではあるけど……私、残念なことに野蛮なのって得意じゃなくて。ましてや、素人に試合面で協力できることは何もないしさ。利害の不一致ってことで、ここはひとつ交渉不成立にしておこうよ」



わざとらしくトーンの上げられた明るい声音に、顔に浮かぶあの見慣れたいつもの微笑み。

胡散臭さ満載の様子でほたるはなんでもなさそうにそう言い放つと、自室に戻ろうとそさくさと足を進めた。



「意外と野蛮なんだね、鬼道くんって」

「……俺はまだ、“YES”とも“NO”とも言ってないぞ」



すれ違いざまに交わされた一見なんでもなさげなその会話は、蓋を開けてみれば互いの想いがぎゅうぎゅうに詰め込められていたのだった。

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