第74話 努力の◆並荵絢垰訶澄 ページ47
「オレも、じいちゃんに憧れてキーパーになろうって決めたんだ」
橙色に染まりつつある空を見上げながら、どこか遠くを見つめている円堂。立向居は「そうだったんですね……」と相槌を打つと、意を決したようにゴクリと喉を鳴らしてから「でも、」と話を切り出した。
円堂ははっとしたように肩を揺らすと、すぐに空からそんな立向居の姿に視線を戻す。立向居の表情は、まさに真剣そのものだった。
「円堂さんだってすごいキーパーです。それにオレ、貴方に憧れてキーパーになろうと思ったんです!」
「えっ……お、オレに?」
「はい! オレ、もともとはミッドフィルダーだったんです。でも、フットボールフロンティアで円堂さんのキーパー姿を見て、それがすっごくカッコよくて……」
──"だから、オレもキーパーになろうって決めたんです!"
立向居はきゅっと目を瞑りながら、想いを全て外にはき出すかの如く力強くそう叫んだ。そんな立向居の姿に、円堂は思わず目を丸くする。けれど、すぐにその表情は優しい微笑みへと変わっていった。
「そうだったのか……キーパーって楽しいよな」
「はい! でも、オレ、キーパーとしてはまだまだ駄目で。いつも先輩たちに気迫が足りないって怒られちゃうんですよね……」
「そんなことないぜ! お前、ボール取るときすっげえ気合い入ってたぞ。この前の試合だって、オレ、ビリビリきたんだ!」
「ほ、ホントですか? 嬉しいです……へへ」
立向居はふにゃりと頰を綻ばせた。あの憧れの円堂からの褒め言葉だ、嬉しくないわけがない。
円堂は空を眺めながら暫く考え込むと、何かを思いついたように「あ、そうだ!」と言ってからもう一度立向居のほうへと向き直した。その内容は、立向居にとっては予想だにしていなかったもので。
「せっかくだし、立向居もちょっとムゲン・ザ・ハンド練習してみるか?」
「え? い、いいんですか?」
「もちろんだ! オレ、お前のことすっげえ気に入ったんだ」
「へ……!? は、はい! すっごく嬉しいです、ありがとうございます!!」
笑顔で楽しげにそう話す円堂に言われるがまま、今度は円堂に代わって立向居がゴールの前へと立ちはだかった。円堂は裏ノートに視線を落としながら、その内容なるものを大きな声で読み上げる。
「いいか、まずこのムゲン・ザ・ハンドを成功させるのに必要なのは──」
77人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こめこ(プロフ) - アインツバルさん» コメントありがとうございます。私にはもったいなすぎるお言葉です……! 完全なる長編なので読むには少し骨が折れるかもしれませんが、ぜひ楽しんでいただけると嬉しいです( ´∀`) (2019年4月7日 18時) (レス) id: 67fc292324 (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - あ、こめこ様の作品発見! 神作品の予感がするぜぇ...!! (2019年4月7日 11時) (レス) id: db0b681609 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:こめこ | 作成日時:2019年3月7日 18時