第65話 星の子�� ページ38
「え？ ああ、うん。別にいいけど……」
「ふふ。ありがとう、水野さん」
そうしてまたどこか見覚えのある笑みを浮かべると、ヒロトくん(仮)は円堂くんを連れて陽花戸中の外へと去っていった。
二人の姿が見えなくなったのを確認して、私は広げた紙を片付けようとくるりと後ろへ方向転換する。
すると、いつの間にこちらへ来ていたのだろうか。どうやらそんな彼らの姿を見ていたらしい塔子と鬼道さんが、なにやら探るような目つきで円堂くんたちの通った校門の方を見つめていた。この慣れない妙な雰囲気を纏いながら、塔子は鬼道さんに話しかける。
「……なあ。アイツ、怪しくないか？ いつもアタシたちが行く先に現れてさ。偶然にしては、ちょっと出来すぎっていうか」
「……」
鬼道さんは何も言わなかったけど、その表情はなんだか全てを見据えているようで、それがよりこの妙な雰囲気に拍車をかけた。
私的には初めましてだったけど……そうか。塔子たちイナズマキャラバンにとっては、彼は"怪しい人間"の部類に入るんだ。たしかに"常に行く先々に現れる"というのは誰がどう考えても不自然な話だ。まだ悪い人と決まったわけではないけど……う、うーん。この目で真偽を確かめるまでは、まだなんとも言えないな。
ヒロトくんという人間について自分なりに色々と整理をしていると、私はふとあることに気がついた。
"──ありがとう、水野さん"
……一度も会ったことが無かったのに、どうして彼は私の名前を知っていたんだろう？
☆
「守……今日は、キミにお別れを言いにきたんだ」
「お、お別れ？」
校門の影で話し込んでいるのは、言わずもがな円堂守と赤髪の少年"基山ヒロト"だ。
「俺……守たちのこと、とても好きだ。キミたちが楽しそうにサッカーをしているのを見ると、何故か俺まで楽しくなった。でも……」
ヒロトはわざと円堂の顔から視線を外して、なんとか声を絞り出すようにそう呟く。
「俺にとっては、父さんの言うことが全てなんだ。だから……ごめん」
吐き捨てるようにそう言うと、ヒロトは円堂からの返事も聞かずに即座にその場を走り去ってしまった。
「お、おいっ、ヒロト？」
走るその背中に向かって呼び止めようと円堂がヒロトの名前を口にした時にはもう、時すでに遅し。いつの間にかヒロトの姿は見えなくなっていた。
「ヒロト……一体どういう意味なんだ？」
夕焼けに響いた「かあ、かあ」という烏の声は、やけに円堂の耳元に鮮明に残って聞こえた。
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こめこ(プロフ) - アインツバルさん» コメントありがとうございます。私にはもったいなすぎるお言葉です……！ 完全なる長編なので読むには少し骨が折れるかもしれませんが、ぜひ楽しんでいただけると嬉しいです( ´∀｀) (2019年4月7日 18時) (
レス) id: 67fc292324 (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - あ、こめこ様の作品発見！ 神作品の予感がするぜぇ...！！ (2019年4月7日 11時) (レス) id: db0b681609 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こめこ | 作成日時：2019年3月7日 18時
