第56話 優しそうな�� ページ29
有無を言わさない笑みを浮かべてそう言う吉良さんの姿は、ものすごく威圧感に溢れていた。それがなんだか恐ろしくて、私たちは息を呑みながらそっと伐天さんの返事を待つ。
すると、伐天さんは眉を潜めながらも、力強い声でこう答えた。
「──申し訳なか。たとえ吉良さまの頼みばってん、こればっかりは」
「……この私が頼んでも、ですかな？」
「申し訳なか。こん年寄りに免じてどうか……」
あくまでも下手に出て、けれども"絶対に見せない"という強い意志が伺える芯の通った声で伐天さんはそう話す。
吉良さんは少しの間だけ黙り込むと、すぐにまたあの見慣れた笑みを浮かべて「……仕方ありません。お二人の友情に傷を付けるわけにはいきませんね」と残念そうに言った。
なんというか、裏ノートのことを諦めたようには到底見えないけど……ひとまず最悪の事態は回避できたかな。いや、まだ吉良さんがどんな人か、私たちは何も知らないんだけど。
でも、十年以上誰にも見せずに大事に保管され続けてきたようなノートだ。相手がどんな人であろうと、見知らぬ人に迂闊に見せていいようなものではないはず。
「……それでは、私はこれで」
「失礼致します」
話が終わるなり吉良さんと秘書さんはそう言って、すぐに先ほど見たリムジンのある方へと姿を消してしまった。さ、さすが金持ち。ナチュラルにリムジンを使っている。
吉良さんたちが去ったことでなんとなく安心して、私はそっと胸を撫で下ろした。
☆
──夕焼けに照らされたリムジンと共に、揺れ動く影が二つ。
「……剣崎くん。あの子たちが、ジェミニとイプシロンを倒した雷門イレブンですか？ それに、あの茶髪の少女。彼女があの……」
「はい、旦那さま。まさかこのような所で会うとは思いませんでしたが」
「そうですか。雷門イレブンも彼女も、一見強そうには見えないですがね……ところで剣崎くん。わかっていますね」
「はい、旦那さま。あの裏ノート、必ず手に入れるようジェネシスに命じます」
「よろしい。……それにしても、陽花戸中には優良な選手がいるという報告を聞いてやって来ましたが、どれも取るに足らない生徒ばかり。とんだ無駄足でしたね」
「……申し訳ありませんでした、旦那さま。そのような調査報告を出した研究員は既に処分しております」
「そうそう、剣崎くん。雷門イレブンもついでに潰してしまいましょうか。そろそろ目障りですし、それに……」
「……水野Aのことですね。かしこまりました。すべては旦那さまの仰せのままに──」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 77人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こめこ(プロフ) - アインツバルさん» コメントありがとうございます。私にはもったいなすぎるお言葉です……！ 完全なる長編なので読むには少し骨が折れるかもしれませんが、ぜひ楽しんでいただけると嬉しいです( ´∀｀) (2019年4月7日 18時) (
レス) id: 67fc292324 (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - あ、こめこ様の作品発見！ 神作品の予感がするぜぇ...！！ (2019年4月7日 11時) (レス) id: db0b681609 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こめこ | 作成日時：2019年3月7日 18時
