第55話 優しそうな�� ページ28
「吉良って珍しい名字ですよね！ もしかして、親戚だったりするんですか？」
春奈ちゃんは無邪気な笑顔を浮かべながら、何の気なしにそう尋ねる。
春奈ちゃんの質問に吉良さんが一瞬だけ言葉を詰まらせると、そばにいた吉良さんの秘書らしき人がそれをフォローするように言葉を続けた。
「いいえ、まさか。まったくの初対面……ですよね？」
「え、ええ……」
どこか念押しをするように強調された語尾。それに対して瞳子さんは、難しそうな顔をしながらも静かにそう答えた。……いや、そう答えるしかなかったとも言えるのかもしれない。
暗い浅葱色の髪をした秘書さんの「誰だお前」「いつからいたんだお前」感はすごいけど、そんなのツッコミを入れる方がもはや野暮だろう。水野Aは空気の読める女ゆえ、何も口を挟まずに事の流れを見守ることにした。
少しの沈黙が流れた後それをかき消すように真っ先に口を開いたのは、意外にも今までだんまりだった風丸だった。
「なあ円堂。裏ノートのこと、聞かないのか？」
「あ、そうそう！ オレたち、じいちゃんの裏ノートが見たくってここまで来たんです！」
吉良さんや秘書さんのような見知らぬ人がいる手前、あまり今はその話はしない方がいいんじゃないかとも思ったけど、誰も特に気にしていないようだったので私も特に何も言わない。
それに、何も考えていないくせに妙なところで疑り深いのは私の悪い癖だ。たとえ見知らぬ人たちに裏ノートのことを聞かれたとしても、別にそれが今後のことに影響を及ばすわけでもあるまい。
「そのノートに書いてある究極奥義があれば、エイリアを倒すのに役立つって」
円堂くんのそんな言葉に真っ先に反応を示したのは伐天さんではなくて、私の中では"怖い"と名高いあの吉良星二郎さんだった。
「初耳ですね。そんなものが残っているのですか」
「ええ、まあ。大介からノートば預かって十年以上経ちますが、今まで誰にも見せたことはなかったですけん」
「それは……実に気になりますね」
なんだか雲行きが怪しくなってきた。吉良さんは改めて伐天さんを正面で捉えると、あの優しくも少し恐ろしい笑みを浮かべながらあろうことかこんなことを言ったのだ。
「……そのノート、ぜひ私にも見せていただけませんか？」
……嫌な予感、的中だ。
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こめこ(プロフ) - アインツバルさん» コメントありがとうございます。私にはもったいなすぎるお言葉です……！ 完全なる長編なので読むには少し骨が折れるかもしれませんが、ぜひ楽しんでいただけると嬉しいです( ´∀｀) (2019年4月7日 18時) (
レス) id: 67fc292324 (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - あ、こめこ様の作品発見！ 神作品の予感がするぜぇ...！！ (2019年4月7日 11時) (レス) id: db0b681609 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こめこ | 作成日時：2019年3月7日 18時
