第50話 交戦と異変�� ページ23
後半戦に突入して、もうじき30分を過ぎようとしていた頃。
ここまで両者一歩も得点を許すことなく試合は進んでいき、円堂くんの全力の守りもあって、今のところはなんとか一点も失点していない。逆に言えば、一度も得点することが出来ていないとも言えるけど。
「よしっ、水野！ 決めろ！！」
そんな時、不意に聞こえてきた吹雪くんの声。私は瞬時にパスを受け取って、そのまま一気にゴール付近まで駆け抜けていった。覇気のこもった立向居くんの表情が見える。
──やるなら、今しかない。
私はほんの一瞬だけ深呼吸をして、勢いよく右足を蹴り上げる。……よし！
「──フルールトワレッッ！！」
力強く蹴り出したと共に駆け抜けるようにゴールへと飛んでいくボールと、そのボールの軌道を追うように舞う淡い色の花吹雪……それは勢いを止めることなくゴールへと向かっていった。
「あれが"フルールトワレ"……！ やっぱり、Aさんの実力は本物でしたね！！」
「ええ、そうね……」
春奈ちゃんと夏未さんの話す声が、フィールドの外から微かに聞こえてくる。けれど、今の私にはそんなことを気にしている余裕がなかった。なぜなら──
「ゴッド、ハンドオオオオッ！！」
──立向居くんが、またしてもゴッドハンドを使ったのだ。
無数の花弁を纏ったボールは立向居くんの方へと飛んでいく。それはなんとか勢いを抑えずに進んでいって、彼のゴッドハンドをやっとの思いではじき返した。
結果的に言ってしまえば、なんとか私の打ったシュートはゴールの中へと入っていった。けれど、立向居くんがゴッドハンドをした瞬間、フィールドにいる誰もが心を揺らがせた。どちらが勝つかわからない、まさにそんな状況だったのだ。
……今この戦いに打ち勝ったからといって、次また同じような状況に陥ったとき、今と同じように彼のゴッドハンドに勝つことができるとは決して限らない。
「ナイスだ、水野！」
「……よしッ！！」
満足げな表情を浮かべこちらに走ってきた吹雪くんと軽く拳を合わせてから、私は力強くそう叫んで掌を握った。
いまだに鼓動は激しく波打っている。グッと握った私の拳は、高揚する気持ちからか少しだけ震えていた。……楽しい。すごく楽しい！！
「……くそっ！ 次こそは、絶対に止めてみせる！！」
ゴールにいた立向居くんもまた、同じように拳を握っていた。心なしか表情は楽しげに見える。
……試合はまだまだこれからだ。私はぱしりと自分の両頬を叩いて、再び気合いを入れ直した。
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こめこ(プロフ) - アインツバルさん» コメントありがとうございます。私にはもったいなすぎるお言葉です……！ 完全なる長編なので読むには少し骨が折れるかもしれませんが、ぜひ楽しんでいただけると嬉しいです( ´∀｀) (2019年4月7日 18時) (
レス) id: 67fc292324 (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - あ、こめこ様の作品発見！ 神作品の予感がするぜぇ...！！ (2019年4月7日 11時) (レス) id: db0b681609 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こめこ | 作成日時：2019年3月7日 18時
