第48話 夕暮れのもとで�� ページ21
「立向居」
不意に、円堂くんが立向居くんの名前を呼ぶ。
「は、はい？」と不思議そうにしている彼の様子もお構いなしに、円堂くんはそのままずんずんと立向居くんとの距離を近づけていった。
「ど、どうかしましたか？」
「──手を見せてくれ」
「え、ええっ？」
戸惑いながらも、立向居くんは言われた通り円堂くんの方へ自分の掌を向ける。すると円堂くんは突拍子もなくいきなり彼の手を掴んで、彼の掌をじっと見つめてから何かに納得したように「やっぱりな」と呟いた。
「手にマメがいっぱいだ。お前も相当特訓したんだな」
「い、いえ。そんな……」
「努力は必ず結果に繋がる！ お前との試合、楽しみだ！！」
そう言って円堂くんが明るく笑えば、立向居くんもその笑顔につられるように口角を上げながら「は、はい……！ 」と大きく返事をする。
「……オレ、がんばります！ 見ててください、円堂さん！！」
それだけ言うと、立向居くんは他の二人と一緒にコートの方へと素早く去いってしまった。
……そんな彼の姿に、私は何故だか妙な違和感を覚える。風丸は心配そうに眉を顰めながらこちらに話しかけた。
「どうしたんだ、A？」
「いや……立向居くん、なんか、どこかで見たことがあるような」
「……？」
一瞬だけ感じた妙な既視感は、時が進むに連れてすぐにどこかへ消え去ってしまった。
……きっと、単なる気のせいか何かなのだろう。私はそう考えることにして、みんなと共に陽花戸中との試合に臨むことにした。
☆
「ディフェンダーは風丸、木暮──」
フィールドの外で、円堂くんが今日の采配を次々とみんなに伝えていく。
「──そして、最後に……フォワードは吹雪とAだ。みんな、よろしく頼むぜ！！」
「おうっ！！」
円堂くんの掛け声を合図にみんなで一斉にそう叫ぶと、なんだか一気に私たちの士気と団結力が高まったような気がした。
どうやら私は吹雪くんとのツートップらしい。せめてみんなの足を引っ張らないようにと、私は自分の胸を叩きながら強く自分自身を鼓舞する。
たまたま吹雪くんが隣にいたので、私はせっかくだからと彼に挨拶をしようと意気揚々と口を開いた。
「吹雪くんもフォワードなんだね。一緒に試合するのは初めてだけど……よろしく！」
「おう」
そう言ってこちらにちらりと目を向けた吹雪くんは、なんだかいつもの吹雪くんではないみたいで。
妙に思いながらも陽花戸中のみんなと挨拶をしてから自分のポジションにつくと、すぐに試合開始のホイッスルがフィールドに鳴り響いた。……キックオフだ。
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こめこ(プロフ) - アインツバルさん» コメントありがとうございます。私にはもったいなすぎるお言葉です……！ 完全なる長編なので読むには少し骨が折れるかもしれませんが、ぜひ楽しんでいただけると嬉しいです( ´∀｀) (2019年4月7日 18時) (
レス) id: 67fc292324 (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - あ、こめこ様の作品発見！ 神作品の予感がするぜぇ...！！ (2019年4月7日 11時) (レス) id: db0b681609 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こめこ | 作成日時：2019年3月7日 18時
