第43話 はじめまして、新天地�� ページ16
「なんばしよっとね、立向居？」
呆れ気味にそう言って、「まあ、大目に見てやってつかあさい」と再びフォローを入れる祭利田くん。彼の視線の先には、恥ずかしそうに車の影に身を隠す立向居くんの姿がある。
「なはは。尊敬しすぎるあまりに照れて話せなくなっちゃうだなんて、かわいいじゃんね」
「そうだな。あーゆーのを健気って言うんだよな、きっと」
塔子とそんな話をしながら、私たちは一歩引いたところで事の行く末を見守る。
「それじゃあ、さっそく陽花戸中へご案内を……と、言いたいところなんですが」
「そん前に！ せっかくやけん、福岡の町も見て行ってくれんね！」
食い気味にそう提案した祭利田くんの双眸は目が眩んでしまうほどに輝いていて、彼はそのくらいこの町のことが好きなのだろうということがひしひしと伝わってくる。
観光に来たわけではないとはいえ、この見慣れない土地を見て回りたいと思っていたのはみんな同じようだ。
次第に嬉しそうな声があちらこちらから聞こえてくるようになって、最終的には祭利田くんたちの提案通りこの福岡の町を少しだけ見て回ることになった。
「オレたちは先に戻って、円堂さんたちが来るって伝えておきますから」
「ああ。サンキューな、戸田！」
「はいはーい！ 私、食べ歩きしたい！ 食べ歩き！」
「おおっ！ いいッスね、Aさん。オレも気になる食べ物がたくさんあるッスよ〜」
「それじゃあ、少しの間だけ自由行動ってことでいいかな？」
みんなの意見をまとめるように木野ちゃんがそう言うと、みんなは元気よく賛同の意を口にした。
「決まりですね。陽花戸中はこの市街地の南東にあるので、観光が終わったらコートの方へいらしてください」
「まあ、ゆっくりしていきんしゃい。福岡はよか
祭利田くんにばしりと背中を叩かれた円堂くんは、そのまま「うわっ！？」と叫びながら歩いてきた道の方向へと一歩前に踏み出す。私たちもそれに続くように先ほど通った商店街の方へと足を進めていって、小さな福岡観光はスタートしたのだった。
「よっしゃ、食べて食べて食い倒れるぞー！」
「え？ あ、わっ」
相変わらず何やら元気がなさそうな吹雪くんがいい感じに近くにいたので、私はそう意気込みながらおもむろに彼の手首に触れ、みんなの行く方へとその腕を引いていく。
咄嗟の判断ができずに吹雪くんはなんだか驚いたような顔をしていたけど、少しでも彼の中にある蟠りから気をそらせたなら正解だったかな……なんてね。
第44話 夕暮れのもとで�、�←第42話 はじめまして、新天地��
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 77人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こめこ(プロフ) - アインツバルさん» コメントありがとうございます。私にはもったいなすぎるお言葉です……！ 完全なる長編なので読むには少し骨が折れるかもしれませんが、ぜひ楽しんでいただけると嬉しいです( ´∀｀) (2019年4月7日 18時) (
レス) id: 67fc292324 (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - あ、こめこ様の作品発見！ 神作品の予感がするぜぇ...！！ (2019年4月7日 11時) (レス) id: db0b681609 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こめこ | 作成日時：2019年3月7日 18時
