第39話 はじめまして、新天地�� ページ12
各々が好きなことを話し始め段々と混沌としてきたところで、木野ちゃんは両手を勢いよく合わせて、ぱん、とその場の空気を切り替えるように大きく破裂音を響かせる。
「それじゃ、早速校長先生の話を聞きに陽花戸中へ向かいましょうか！」
木野ちゃんのその一言で、ようやく私たちは本来の目的を思い出した。
……そ、そうだった。私たちは決して観光をするために福岡に来たわけじゃなくて、あくまでも陽花戸中の校長先生のお話を聞くために遠路はるばるこの地に足を運んできたんだ。危うくみんなで観光を始めるところだったよ、危ない危ない。
なんて、一人でそんなことを考えていた矢先。
「あ！ 向こうに面白そうな店があるッスよ！」
「え？ ちょ、壁山！ 線路の方は危険だって！！」
先程木野ちゃんから声かけがあったばかりだというのに、真っ先に線路の向こうの店をめがけて地面を蹴り始めた壁山の腕を、私は両手で掴んで必死にそれを呼び止める。
その瞬間、いわゆる路面電車と呼ばれるそれは私と壁山の目の前を風を切りながらゆっくりと横切っていって、私の前髪をさらさらと風に乗せ靡かせた。
あと一歩踏み込んでいたら轢かれていたかもしれないと思うと、私も壁山も一気に血の気が引いて思わずごくりと生唾を呑み込んだ。お、おっかねえ……！！
「へー、面白いなあ。通路に電車が走ってるんだ」
「ああ。路面電車ってやつだな」
その横で、なにやら風丸と一之瀬くんという珍しい組み合わせが楽しそうにおしゃべりをしている声が聞こえてくる。
路面電車を知らないなんて一之瀬くんにも案外可愛いところがあるんだな、なんて私は思ったけど、よくよく考えてみれば彼はいわゆるアメリカ帰りの帰国子女だ。日本の古い文化を知らなくたってなんら不思議なことではない。
「……くそう、羨ましいな！！」
「え！？ きゅ、急にどうしたんッスか？」
一之瀬一哉という人間のハイスペックさを改めて実感して、神様はなんて不公平なのだろうと私はこの世の不平等を一人嘆いた。あーあ。私もイケメンに生まれて、バレンタインデーでたくさんチョコレート貰いまくりたかったな！！
「結局はそれが目的だろ、A」
知らないうちに心の声が漏れていたらしく、呆れたような表現をした風丸にそう冷静にツッコミを入れられてしまった。
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こめこ(プロフ) - アインツバルさん» コメントありがとうございます。私にはもったいなすぎるお言葉です……！ 完全なる長編なので読むには少し骨が折れるかもしれませんが、ぜひ楽しんでいただけると嬉しいです( ´∀｀) (2019年4月7日 18時) (
レス) id: 67fc292324 (このIDを非表示/違反報告)
アインツバル - あ、こめこ様の作品発見！ 神作品の予感がするぜぇ...！！ (2019年4月7日 11時) (レス) id: db0b681609 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こめこ | 作成日時：2019年3月7日 18時
