その１１７：空気読めなくてごめんなさい ページ25
「何やってんだよ、一星！」
「え……？」
「お前は悪いヤツじゃないって、プレーを見ればわかる。どうして俺たちに何も話してくれないんだ！」
次いで出た稲森の必死の訴えに、一星は再び目を丸くする。返す言葉が見当たらなかった。
そして意外なことに、次に声を上げたのはあのヒロトで。
「弟が病気なんだよな。で、手術代を工面してもらうためにオリオンの連中に従っている。そうだろ」
「……」
「お前の弟の手術代、俺が親父に借りてやるよ」
「「……えっ！？」」
彼の太っ腹な一言に、一星は
「そんな金、俺には返すあても……」
「お前は今のサッカービジネスの大きさを知らないのか？ もし俺たちが世界大会で優勝すれば、大会スポンサーから賞金が出る。それで手術代は余裕で返せるはずだ。それに……この大会、俺たちなら絶対に優勝できる。そう思わねえか？」
余裕ありげなヒロトの笑顔には、もはや安心感すら覚える。まさか彼がそんなことを言うとは思っていなかったのか、一星は茫然とヒロトの顔を見詰めたままだ。
けれど、いよいよ話が纏まろうとしていたその時、話の流れを変えたのは他の誰でもない野坂で。
「待ってくれないか、ヒロトくん」
「ああ？」
「その必要はあるのかな。そもそも一星くんは、誰を助けようとしているのかな？」
「だから弟だろ……」
「──ここから先は、私が説明しましょう！」
二人の会話を遮ってそう言ったのは、先程まで皆の様子を傍観していただけの趙だった。
趙が言うには、彼は鬼道と連絡を取り合い、イナズマジャパンの中でもかなり怪しい動きをし続けていた一星の素性を調べ上げたのだと言う。
鬼道は岩戸が文通していた手紙から一星の弟・光が入院している病院を突き止め、実際にその場に足を運んだ。しかし、病室に光の姿はなく、結局その日一日帰ってくることはなかったらしい。
趙の話に、一星は誰よりも混乱している様子で「そんなはずは……！」と呟いた。灰崎は一星に弟がいると言う情報すらも嘘なのかと疑ったが、何やらそういうわけでもないらしい。
彼にかつて兄弟がいたことに間違いはないと、趙は淡々とそう語った。
「一星！ 大丈夫か！？」
話を進めれば進めるほど、一星は苦しそうに頭を抱えて表情を歪める。
そうしているうちにピタリと何も話さなくなったかと思えば、今度は人が変わったように辺りを見渡して「兄ちゃん……？」と弱々しく呟いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 468人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
coopee - 初めてコメントさせていただきます！久々にイナイレの占ツクをあさっていたら、まさかこんなにも素敵な作品に出会えるとは思ってもいませんでした。主さんのペースで、完結まで頑張ってください！ (2021年2月18日 17時) (
レス) id: 2eec394d2f (このIDを非表示/違反報告)
鮭の神様(元 レオ)(プロフ) - わぁぁぁぁ！！！続きが更新されてる…！！！楽しみにしてました！！！更新ありがとうございます！！！変な時間に申し訳ございません。これからも無理せず頑張ってください！ (2021年1月25日 2時) (レス) id: 86c31a4b24 (このIDを非表示/違反報告)
こめこ(プロフ) - 奏さん» 大変長らくお待たせしました…！！変なところで切ってしまってごめんなさい；超マイペースではありますが、これからも完結目指してなんとか頑張っていこうと思います…！コメントありがとうございました！ (2021年1月24日 22時) (レス) id: 2935309ddd (このIDを非表示/違反報告)
こめこ(プロフ) - 華兎くんさん» ご心配をおかけしました…！長い間お待たせしてしまい申し訳ないです。これからも楽しんでいただけるよう頑張ります、コメントありがとうございました！ (2021年1月24日 22時) (レス) id: 2935309ddd (このIDを非表示/違反報告)
こめこ(プロフ) - ゆめのわたしさん» コメントありがとうございます。大変長らくお待たせいたしました…！完結までお届けできるよう、これからも頑張っていきます…！！ (2021年1月24日 22時) (レス) id: 2935309ddd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こめこ | 作成日時：2020年5月1日 21時
