その１１６：時には嘘も必要である ページ24
「大丈夫か、一星！」
「一星くん！」
技に巻き込まれ地面に倒れ込んだ一星のもとに、稲森とほたるはすぐさま駆け寄った。それと同時に、前半戦終了を報せるホイッスルがフィールドじゅうに鳴り響く。
一星は酷く冷や汗をかいていて、その姿は朝のバス内での様子とも重なった。
「ほたる、一星をベンチまで運ぼう」
「う、うん。そうだね」
そう言って、ほたるは稲森と同じように一星の片腕を自分の首元に回した。稲森と共に足を進めれば、一星はよろけながらもゆっくりと歩いていく。
ベンチに辿り着き、椅子に腰を下ろしても尚彼の顔色は悪いままだった。
「大丈夫？」
「光と、またサッカーをしたかっただけなのに。 なんで……誰かを傷つける真似までしたのに、光は、光は……！」
汗を拭おうと大谷がタオルを差し出したけれど、一星はそれを手で払いのけるだけだった。彼は俯き片手で顔を覆いながら、譫言のように言葉を紡ぎ続けている。
そんな彼の姿に見兼ねて、ほたるは声をかけようと口を開いた。しかし、そんな彼女の行動を遮るようにして声を上げたのは、ほたるも恐れるあの男だった。
「君は誰も傷つけていないよ。少なくとも、この試合ではね」
そう言って野坂が視線を送った先には、序盤で負傷退場したはずの風丸と吹雪の姿が。彼らは特に怪我をしている様子でもなく、寧ろいつもと何ら変わりないようだった。
風丸は爽やかな笑顔を浮かべながら、何でもなさそうに「そういうことだ」と話す。野坂曰く、序盤の風丸と吹雪の退場は一星のペースを乱すための芝居だったらしい。一星が二人を狙うように仕向け、ラフプレーを受けた際には怪我をしたふりをするよう言ってあったのだという。
「主演男優賞もののリアルな演技だっただろ？」
「痛がるふりをするための特訓、なかなか楽しめたよ」
それでも、一星は表情を歪めたまま「だとしても、俺が誰かを傷つけようとしたことには」と弱々しく呟いた。野坂は薄く笑みを浮かべる。
「僕のことは守ってくれたじゃないか」
「……俺にはできなかった。サッカーで、人の命を奪うなんて」
「ああ、それなら安心して。僕の頭が危険だという話は、君を惑わすための嘘だから」
「……え？」
にこりと微笑みながら平然とそう言ってのける野坂に、一星は小さく声を上げる。
「僕の体に何も問題はないよ。それに、それでも君が僕を守ってくれたことに変わりはない。ありがとう、一星くん」
野坂の言葉に、一星は酷く困惑しているようだった。
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coopee - 初めてコメントさせていただきます！久々にイナイレの占ツクをあさっていたら、まさかこんなにも素敵な作品に出会えるとは思ってもいませんでした。主さんのペースで、完結まで頑張ってください！ (2021年2月18日 17時) (
レス) id: 2eec394d2f (このIDを非表示/違反報告)
鮭の神様(元 レオ)(プロフ) - わぁぁぁぁ！！！続きが更新されてる…！！！楽しみにしてました！！！更新ありがとうございます！！！変な時間に申し訳ございません。これからも無理せず頑張ってください！ (2021年1月25日 2時) (レス) id: 86c31a4b24 (このIDを非表示/違反報告)
こめこ(プロフ) - 奏さん» 大変長らくお待たせしました…！！変なところで切ってしまってごめんなさい；超マイペースではありますが、これからも完結目指してなんとか頑張っていこうと思います…！コメントありがとうございました！ (2021年1月24日 22時) (レス) id: 2935309ddd (このIDを非表示/違反報告)
こめこ(プロフ) - 華兎くんさん» ご心配をおかけしました…！長い間お待たせしてしまい申し訳ないです。これからも楽しんでいただけるよう頑張ります、コメントありがとうございました！ (2021年1月24日 22時) (レス) id: 2935309ddd (このIDを非表示/違反報告)
こめこ(プロフ) - ゆめのわたしさん» コメントありがとうございます。大変長らくお待たせいたしました…！完結までお届けできるよう、これからも頑張っていきます…！！ (2021年1月24日 22時) (レス) id: 2935309ddd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こめこ | 作成日時：2020年5月1日 21時
