"第一幕 揺れ動く幕開け" 8話 ページ9
分かる。
私の言葉、おきは分かるといってくれた。
ーわた、し。私、言葉通じてないって…誰にも聞かれてない、かと思って…。
「うーん…オレも、君の言葉が完全にわかるわけじゃないんだ…。けど、何となく…っていうか。感情が流れ込んで来るっていうか……。あーもう、ワケわかんないよね」
おきは、ポツリポツリと自分で整理するように喋り、そして困ったように笑う。
私の言葉が全部分かるわけじゃない。
けど、それでも。私が喋ってると、そう気づいてくれた人はおきが、初めてだ。
ーおき、おき。私ね、私は…嬉しい、のかもしれないの。
「…うん」
ー私、初めてなんだよ。こうして、話し掛けてくれたの…おきが、初めてなの。
「…ーうん」
溢れ出す。
言いたいこと、伝えたいこと、感情のままに。全部全部、おきに伝えたい。
今まで言えなかった分、言葉が止めどなく溢れ出して、喋るのが覚束なくて。それでも、おきはゆっくりと相づちをうってくれる。
ー嬉しい。人と会話するのが、こんなにも嬉しいなんて…。
「ーそうだ。オレずっと聞きたかったんだけど…君の名前って「お、何々?沖誰と会話してんの?」…田島、どうしたの?」
おきの真横から、タジマが声をかけてくる。
この子も、私の言葉が聞こえるだとか言っていたけど…実際のところは本当なのか分からない。
頭の上に手をおいて、退屈そうにあくびをしていたタジマはおきの側に腰掛けさも楽しそうに会話に混ざる。
「いや〜三橋ちょっかいだして遊んでたんだけどさー、モモカンに叱られちまって…。仕方ないからこっち来た!!んで、沖はなにしてんの??」
「…いや、オレはー」
「もしかして、オレらの守り神と会話してたりー?」
にしし。とイタズラが成功した時のような表情で、タジマは笑っていた。
おもむろに立ち上がったかと思えば、私に近寄ってまたもピントが合わないほど間近に顔を寄せてくる。一体どういうつもりなんだろうか…。
「んー…。今はなぁーんも喋ってないのか〜?」
ーおき、おき。タジマが近い、遠ざけて。
「う、うん。田島、ほら花井が呼んでる。早くいってあげなよ」
「……った」
「へ?」
「やっぱ、喋ってる…?」
タジマは本当に驚いたようで、目を見開いて私を凝視する。
今まで私はずっと喋っていた。
けどそれは全部自分の中で自問自答している“独り言”の類い。その時はおきにも、タジマでさえ気づいてなかった。と、思う。
けど今は第三者に向かって、喋ってる。
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うみしお - hina hihohoさん» 皆好き…すごく分かります!皆個性的でカッコいいですもんね〜。ついつい応援したくなっちゃいます。 暖かいコメントありがとうございます、もっともっと頑張りますね!^^ (2017年12月4日 14時) (レス) id: 1a7d18c6c3 (このIDを非表示/違反報告)
hina hihoho(プロフ) - うみしおさん» そうなんですよねぇ〜。阿部くん田島くんが多くて...私は泉くんおしです!沖くんも大好き!てか、皆好き!これからも頑張って下さい! (2017年12月4日 7時) (レス) id: 0035085ab5 (このIDを非表示/違反報告)
うみしお - hina hihohoさん» コメントありがとうございます。おお振り内じゃ沖くんが一番好きなのですが、沖くんの夢小説があまりにも無くて…自分で書いてしまいました…!沖くんは本当に癒しですよね、わかります…! (2017年12月4日 2時) (レス) id: 1a7d18c6c3 (このIDを非表示/違反報告)
hina hihoho(プロフ) - おお振りの夢小説を書いている仲間がいた!沖くん癒されますよねぇ〜。私も好きです! (2017年12月3日 9時) (レス) id: 0035085ab5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うみしお | 作成日時:2017年11月28日 23時