"第一幕 揺れ動く幕開け" 10話 ページ11
ー分からないよ…。おき、おき……私、凄く寒いの…
誰もいないグラウンド。
私の“独り言”は全て静寂が拾って、霧散させていく。
この言葉が聞こえている人は誰もいない。
「…それって、さ…はぁ、“寂しい”って、感情…なんじゃないかな…はっ、はぁー」
誰もいない、筈なのに。
私の眼前に膝に手をついて乱れた呼吸を整える青年の姿が映る。
ーおき…どうして？
「どうしてって…君が、ずっとオレの名前…呼んでるみたいだったから」
そう言っておきは人差し指で頬をかき、はにかむように笑う。
ーもう、帰っちゃったと思った
「うん…オレも、帰ろうとはしてたんだけどね…。ずっと、君がオレ呼んでるように感じて、急いで戻ってきたんだ」
ずっと…。
ーずっと、私はおきを呼んでいたんだ。
言われて初めて気付いた。
私は、ただ自分自身で自問自答しているだけかと思っていたけれど、本当はずっとずっと、“誰か”を呼んでた。
昼は、皆がいる。
けど、皆が帰った後のグラウンドはとっても静かで、私一人しかいなくて…。
その時に感じる“寒さ”を逃れるように、私はずっと誰かに向けて喋ってたんだ。
ーずっとね…寒かったの。いつもは感じないのに、今日だけ…とっても寒かった。それって、“寂しい”ってこと…？
「多分…いや、きっとそうだよ」
寂しい。
いつもの私には、到底縁の無かった言葉。
それなのに、私は今“寂しさ”を感じているらしい。
ー寂しい…私は、寂しかったんだ。
言葉に出してみると、案外スッと納得できた。
皆からしたら“当たり前”なこの感覚。
今まで感じていなかった筈のこの感覚に気付いたのは、おきが私に教えてくれたから。
その“感覚”が縫いぐるみである私にとって、いい事なのか…まだ、分からない。
「…あの、さ。君…いつもずっとそこにいるの？」
おきはおずおずといった風に、聞いてくる。
ー…うん、ずっと。皆が帰った後も、私はずっとここにいる。
ハッキリと、私はそう告げる。
その言葉を聞いたおきは、悲痛そうに顔を歪めて私を見た。
「寂しくない…？」
ー……寂しくない、って言ったら嘘になるけど。仕方ない、から。…私を迎えに来てくれる人は、もういないから…。
半分本当で、半分嘘。
本当はすっごくすごく寂しい。皆が帰る側を、私も並んでいきたい。
迎えが来ないのも、寂しい。
とっても広くて、寒いグラウンドで独りぼっちは嫌だ。
一人は、もう嫌だよ…。
「…ーオレが一緒にいるから」
続く
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うみしお - hina hihohoさん» 皆好き…すごく分かります！皆個性的でカッコいいですもんね〜。ついつい応援したくなっちゃいます。 暖かいコメントありがとうございます、もっともっと頑張りますね！＾＾ (2017年12月4日 14時) (
レス) id: 1a7d18c6c3 (このIDを非表示/違反報告)
hina hihoho(プロフ) - うみしおさん» そうなんですよねぇ〜。阿部くん田島くんが多くて...私は泉くんおしです！沖くんも大好き！てか、皆好き！これからも頑張って下さい！ (2017年12月4日 7時) (レス) id: 0035085ab5 (このIDを非表示/違反報告)
うみしお - hina hihohoさん» コメントありがとうございます。おお振り内じゃ沖くんが一番好きなのですが、沖くんの夢小説があまりにも無くて…自分で書いてしまいました…！沖くんは本当に癒しですよね、わかります…！ (2017年12月4日 2時) (レス) id: 1a7d18c6c3 (このIDを非表示/違反報告)
hina hihoho(プロフ) - おお振りの夢小説を書いている仲間がいた！沖くん癒されますよねぇ〜。私も好きです！ (2017年12月3日 9時) (レス) id: 0035085ab5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うみしお | 作成日時：2017年11月28日 23時
