「ただいま」「おかえり」 ページ3
渡「おい、起きろ。A」
ソファの前にしゃがんで、ふっかの膝でスヤスヤ寝こけるAを覗き込む。
まったく。俺の気も知らないで。穏やかな顔で寝やがって。
見ていたらまたムッとしてきたので、Aの頰をキュッとつまむ。
Aは寝苦しそうに顔を歪めた。でもまだ起きない。
深「王子様のキスで起こしてあげれば?」
渡「馬鹿言うな」
ふっかの中途半端な冗談は軽く流して、Aの肩を揺さぶった。
渡「A、起きて」
「ん……うぁ」
めちゃくちゃマヌケな顔でゆっくり瞼が持ち上がって、その薄目が俺を捉える。
そして、捉えた瞬間。
薄く開いた目と唇は、ゆる〜っと弧を描いた。眠たげだけど、愛しいものをみる目が、俺に笑いかける。
「……しょうた、」
完全に力の抜けたAの左手が、ゆっくり持ち上がって、俺の頬に軽く触れる。
眠たい時の、体温の高い手の平。
それはするりと一瞬頬を撫でただけで、脱力して落ちていく。だから、落ちきる前に咄嗟にキャッチして、きゅっと握り込む。
けど、Aは。
起きたのはたったの一瞬で、もう夢の中。
深「ねぇ何今の……可愛かったね……」
ふっかの溢れるようなつぶやきにハッとした。
渡「おい、あんま見んな」
あんま見るななんて、この体勢で無理に決まってるんだけど。
渡「ダメだこいつ、起きねぇ」
深「Aちゃん寝起き悪いんだよなぁ」
しょうがねえ。最終手段だ。
俺はAの首の下と、折り曲げられた膝の下に、腕を無理やりねじ込む。
深「あら! お姫様抱っこ?」
渡「するしかない………よっ!」
軽く勢いをつけて、しゃがんだ状態から一気に持ち上げる。
渡「あ、重てぇ!」
眠って脱力した人間は例え女とはいえ重たい。
渡「ふっか! Aの部屋のドア開けて!」
少女漫画みたいに軽々とはいかないもんだ。
ふと、一瞬。
照だったら軽々持ち上げて、余裕で運べるのかなとか考えてしまって。
…………もっと鍛えようかな。
俺はブンブンと頭を振って、Aを部屋へ運んだ。
1888人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
kmgapsy03(プロフ) - 読ませていただきました!はじめまして!ここやまで感情移入して最後まで一気に読んだのは初めてです。もし機会があればまた番外編お願い致します!素敵な作品ありがとうございました! (2021年5月1日 9時) (レス) id: 70d4c7f329 (このIDを非表示/違反報告)
モモ(プロフ) - 初めまして!とっても素敵なお話ありがとございました!気付いたらシリーズ全話を読み切って、最後のシーンは感情移入しすぎて涙が出てくる程でした。笑これからも作品楽しみにしています! (2020年5月11日 10時) (レス) id: 509ae5e169 (このIDを非表示/違反報告)
ななし - リアル大学生って感じすごいするし、恋してる時の表現もリアルだし、もう!ホントのホントに面白かったです!!岩本照オチでも作って欲しいです!!是非よろしくお願いします!!!あなたの書く岩本照がタイプすぎました! (2020年5月7日 6時) (レス) id: ab04fd4402 (このIDを非表示/違反報告)
ハイプ(プロフ) - はじめまして!占ツクで色んなお話を読んできたけど、1番きゅんきゅんしたお話でした!!もしよかったら、本当にもしよかったら続きを書いて欲しいです。それか新作が読みたいです。図々しいかもしれないけど、本当に大好きなお話なので待ってます!! (2020年3月29日 23時) (レス) id: e01e06ee05 (このIDを非表示/違反報告)
N(プロフ) - ふっかの存在感が好きです!! (2020年3月27日 4時) (レス) id: cdeb7d33d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:おかゆ | 作成日時:2019年11月13日 23時