「帰ろっか」「うん」 ページ12
Aに会いたい。いますぐ。
でも会うのが少しだけ怖いような気がする。
みたいな、変な気持ちだ。
4限終了のチャイムを他人事のように聞く。
結局4限が終わるまでずっと座り続けてしまったってことは、やっぱり俺はAに会いたいんだろう。
近くの教室からゾロゾロと学生が出てくる。
スマホが重たくて持ち上げられない。Aから連絡が来てるかもしれないのに。
いい、Aは見つける。学生の群れをぼんやりと見つめて、Aを探す。
学生が、少し減ってきて、そしたらいた。
Aは俺より先に俺を見つけていたのか、まっすぐ俺を見て、ただいつも通りにそこにいた。他の何も視界に入らなかった。
あれこんなこと前にもあったっけな、とか、なにか記憶に触れた気がして、でもすぐにどうでもよくなった。
イスから立ち上がって、そしたらAも俺の方へ歩いてきた。
俺の目の前で止まって、この世で1番好きな笑顔で、
「帰ろっか」
そう言った。
渡「うん」
俺は頷いた。
俺は、Aが好きだから、諦めなかった。
でも俺は、諦めることだってできたと思う。
それはやっぱり、好きだから。
帰ろうって言われてうんと頷けるという幸せが今ここにあるのは、運命なのか偶然なのか。
それはきっと、数えきれないくらいの偶然が積み重なってできた、一連の運命。
俺は、諦めなくて済んだだけなんだ。
渡「待って、その前に」
「……ん?」
言ってから、あ、別に歩きながらでも良かったかと思ったけれど、振り返ったAを心底好きだなと思ったから、そんな些細なことは別にいい。これはいつものこと。
渡「………俺、Aのこと世界一大切にする」
なんだか、珍しく照れくささよりも"伝えたい"という気持ちが1番にあふれて、これが衝動ってやつかと場違いなことを考えた。
Aはどうせ『当たり前だろ!』って偉そうな笑顔で言ってくるか、『いきなりなに?!なにも奢んないよ!』って怪しむかのどっちかってところだろう。
って、思っていたのは、
俺がまだまだAを知らなかったってことなのかな。
Aは
「………うん、あたし、世界一幸せだね」
そんなことを言って、
本当に世界一幸せみたいな笑顔で笑われて、
あれ、あれれ。
俺って、世界一幸せかもしれない。
渡「……っ、よし、帰るか」
急に照れが襲ってきたから、さっさと背を向けて歩きだす。
すぐにAが俺の隣に駆け寄ってきて、ああ、やっぱり俺は世界一幸せだった。
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kmgapsy03(プロフ) - 読ませていただきました!はじめまして!ここやまで感情移入して最後まで一気に読んだのは初めてです。もし機会があればまた番外編お願い致します!素敵な作品ありがとうございました! (2021年5月1日 9時) (レス) id: 70d4c7f329 (このIDを非表示/違反報告)
モモ(プロフ) - 初めまして!とっても素敵なお話ありがとございました!気付いたらシリーズ全話を読み切って、最後のシーンは感情移入しすぎて涙が出てくる程でした。笑これからも作品楽しみにしています! (2020年5月11日 10時) (レス) id: 509ae5e169 (このIDを非表示/違反報告)
ななし - リアル大学生って感じすごいするし、恋してる時の表現もリアルだし、もう!ホントのホントに面白かったです!!岩本照オチでも作って欲しいです!!是非よろしくお願いします!!!あなたの書く岩本照がタイプすぎました! (2020年5月7日 6時) (レス) id: ab04fd4402 (このIDを非表示/違反報告)
ハイプ(プロフ) - はじめまして!占ツクで色んなお話を読んできたけど、1番きゅんきゅんしたお話でした!!もしよかったら、本当にもしよかったら続きを書いて欲しいです。それか新作が読みたいです。図々しいかもしれないけど、本当に大好きなお話なので待ってます!! (2020年3月29日 23時) (レス) id: e01e06ee05 (このIDを非表示/違反報告)
N(プロフ) - ふっかの存在感が好きです!! (2020年3月27日 4時) (レス) id: cdeb7d33d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おかゆ | 作成日時:2019年11月13日 23時