嫉妬と理性【及川徹】

第24話 湯気 ページ24

第9章 やり直せ 及川side


｢めっちゃ美味しい……｣

｢ゴチになります!!｣

｢１個って言ったでしょうが!!｣



そう、おちゃらけた風に言いつつ
俺はずっとAちゃんの事を考えていた。



けど、気にしたところで仕方ないと強がってみる。


その心中に恐らく誰も気づかないのであろう。


国見ちゃんも普通にしている。




今頃、Aちゃんは
図書室で1人で待っているのだろうか。

そんなの、知ったこっちゃない。



Aちゃんも自分から告白してきた癖に
その割には俺を簡単に捨てるらしい。

そんな事ないと思っている自分もいるが
それを認めて全て見過ごしてしまえば
自分が負けな気がした。




ちょっとした強がり。


男なんてそんなもんだ。




｢この後みんな暇?
夕ご飯及川さん奢っちゃおうかな〜｣

｢えっ!? ホントですか!?｣

｢なにたくらんでんだよ……｣

｢ふふふふ｣



俺の心中を見透かしているのか何なのか
岩ちゃんは俺を疑い深い目で見ていた。



でも、これだけ長い付き合いだし
俺と岩ちゃんは以心伝心。
とは、男同士でなんてキモくて言いたくないが

かなり心は通じあっていて
相手の気持ちは理解しているつもりでいる。



それが、バレーのプレーにも
現れていると俺は思っている。


けど、所詮人同士。
全てが分かるとは言えない。


普段奢ったりしない俺がこんな事を言うのは
一人になればAちゃんの事を
考えてしまうと思ったから。


考えればすぐにでも走って
図書室へ、Aちゃんの所へ
行ってしまうと思ったから。


そうなっては少しも変わらない。

第25話 背中→←第23話 淡麗

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す