第二章 2-2 ページ10
アレンに関しては、否定するつもりはない。曲がりなりにも彼は弟弟子なのだから。
そう、アレンに関しては、だ。
「神田にはよく思われてないと思いますよ」
他と比べて、ほんの少し調和が取れるか取れていないか。そんなものだ。
「間に入っても胃の腑が痛まなさそうだし」
「酷い言い草ですね」
全く、他人をなんだと思っているのかとわざとらしく小言をぼやいたが、コムイ相手に通用する筈もない。
「頼むよ。他に任せられる人がいないんだ」
面と向かって頼られることに弱いということをわかっていて言っているのだから、この人も存外人が悪い。普段のおちゃらけた態度など感じさせないコムイの真剣な声色と眼差しに、断る術などAにはないに等しいのだ。
「……彼等の命は保証します」
それだけ吐き捨てて、今度は乱雑に閉められたドアをコムイは暫く見つめていた。
「君にも無事でいてほしいんだけどな」
その姿はまるで、手の掛かる子供を慈しむようなものだったという。
こうして、Aの同行が決定した。
空になった珈琲カップ片手に頬杖を付き、言い合いをはじめた彼等をそれとなく眺める。
「放せよモヤシ」
「アレンです」
鼻で笑う神田は割かしいつもの調子で喧嘩を売る。神田は如何せん調和を取らない質なので、すぐにあちこちで敵を作るのだ。
「１ヶ月で殉職しなかったら覚えてやるよ。ここじゃパタパタ死んでく奴が多いからな」
一方で神田の腕を掴むアレンを見て思うのは、やっぱり彼は正義感が強すぎるということだった。
「だから、そういう言い方はないでしょ」
正義感、というよりは優しさ。優しさというよりはお人好しといった方がしっくり来るか。
アレンは他人の痛みがわかる良い子だ。だからこそ、神田とは反発してしまう。そんなことはある程度予想していたし、そもそも神田と気の合う人なんて中々現れるものでもないのだから、相対するのは一向に構わない。
ただ、任務に関して言えば、ある程度の連携を取れなければ話にならないのだ。
「早死にするぜお前キライなタイプだ」
「そりゃどうも」
任された手前この惨状じゃあ、先が思いやられる。誰に気づかれることもなく、そっと溜め息をついて、空のコーヒーカップに目を落とす。
「あっいたいた、神田！ アレン！ A！」
名前を呼ばれた三人がそれぞれ反応を示す。
「10分でメシ食って指令室に来てくれ。――任務だ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 36人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
