第一章 1-5 ページ6
「あっ、神田！」
自身の名前を呼ばれた神田は反射的に歩みを止めた。
顔だけを此方に向ける彼の仏頂面に
「って…名前でしたよね？」
少しタジタジに言葉を繋げるが、すぐに持っている荷物を降ろして空けた右手を彼の前に差し出して「よろしく」と言う。
黙って一部始終を見届けた神田は、微妙に眉を顰めて明らかな不機嫌な声色で
「呪われてる奴となんか、握手するかよ」
とだけ告げてその場を後にした。
予想していなかったであろうその返しにアレンからは言葉にならない声が漏れ、引き攣らせた顔に、差し出した右手は行く場所を失い大袈裟なくらい震えている。
「ごめんね、任務から戻ったばかりで気がたってるのよ」
「そんな気にしなくてもいいって。誰に対してもあんなだからね神田は」
苦笑いをしていながらも、すかさずフォローを入れるリナリーに続いてアレンを励ましてみた。Aの告げたことは事実である。
「はいはい、Aはそんな事言わない！」
「もうっ」と軽めにバインダーを振り下ろされて、本日二度目の効果音が今度は神田ではなく自身の頭上から聞こえた。紛うことなき事実なのだが、言葉選びが少々至らなかったみたいである。
痛さを感じない頭に手を当て、リナリーが加減してくれていることに気が付いた。思い遣りのある彼女らしい。
「あのねリナ、バインダーは武器じゃないよ」
「それじゃ城内を見て回ろっか」
軽く流された様子につられてアレンは持ち直していた。少し癪なのだが、彼の機嫌はまあ直ったということで良しとしよう。
ゆっくりと歩きだしたリナリーとAの後を少し遅れてアレンは追って行った。
只でさえとっつき難いであろう部類の人柄である神田と最悪な出会いをしたアレン。
この時まず、間違いなく彼らは衝突することになるだろうとAは思っていたが、その衝突は予想よりも猛スピードで繰り広げられ、自分自身がそれに巻き込まれるとは夢にも思わなかっただろう。
「新入りか」
「なんだ、子供じゃねぇか」
「老人かと思ったら…なんだあの髪」
「呪われてるらしいぞ」
「大丈夫かよそんなガキで」
「まぁ、イノセンスに年齢は関係ないからな」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 36人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
