復讐【ht】 ページ5
｢ねぇぐるちゃん,いつ出られる?今日?｣
｢まぁ落ち着けひとらんらん,準備等々があるのは分かっているだろう？｣
｢落ち着いて居られる訳無ぇだろｯ……!!!｣
｢まぁまぁ,気持ちも分かるけどグルさんの言ってる事が正しいのは分かるやろ?｣
｢………………｣
会議室に集まるは14人の軍人｡赤い×印のついたマスクを外そうとしつつ金髪赤目の一際威厳のある男に大きな声を上げる白い軍服の男を黒髪を七三に分け紅いマフラーを巻いた男が宥めていた｡いつもは温厚で優しさに溢れる白色の彼がこうなったのはほんの数分前,会議が始まった頃へと遡る｡
｢今日は重大な報告がある｡｣
いつもはがやがやと騒がしく,正に議会は踊るされど進まず,という言葉がぴったりな朝の恒例会議で珍しく総統であるグルッペンがやけに神妙な顔をして声を上げた｡静まり返った会議室に彼特有のバリトンボイスが低く響く｡
｢隣国,α国に戦争を仕掛けようと思っている｣
｢お,日程は?｣
｢明日だｿﾞ｣
｢はｧｯｯｯ!?｣
グルッペンの唐突な提案に各々違った反応をする｡深緑はくすくすと笑い,水色と黄色と黄緑は目を輝かせ,赤は頭を抱える｡赤色の彼,基トントンが粛清しようとするのを大きなピンクトパーズを目に嵌めた低身長の彼が止めた｡
｢待ってもらってええか,トントン｡今回ばかりはグルッペンにも理由があるんよ｡｣
いつもの大声ではない,何処か安心できるような声｡渋々トントンも腰に掛けた剣から手を離す｡
｢そう,ロボロの言う通り,今回急いでいるのには理由がある｡人命が掛かっているんだ｡｣
｢そんなに重大なん?俺のとこの部隊はいつでも戦えるように指南してあるで?｣
｢自軍の兵の命は心配していない。α国に殺られる程やわじゃないからな｡｣
｢じゃぁ誰が?｣
｢ロボロが見つけてくれたんだ｡ひとらんらん,｣
｢……?｣
｢お前の妹が,α国に幽閉されてる｣
彼が育ったのは国の端の小さな田舎町,父と母,そして可愛らしい妹の家族円満な四人家族だった｡その平和な日々が崩れたのは今から丁度10年前,彼らの家に賊が入り込んだのだ｡子供達を守ろうと必死に抗う両親,しかし抵抗も虚しく2人は紅い花となってしまう｡自らも最愛の妹を守る為に父の形見の日本刀を握る彼｡だが子供が屈強な男達に敵う訳がない｡気が付けば夜は明け,家には自分ただ1人が取り残されていた｡復讐心に燃え,日本刀片手にふらふらと彷徨い歩く彼｡そんな時だ,グルッペンと出会ったのは───
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