63、松野家長男にはお見通し。 ページ15
しばらくの沈黙が流れた後、あいつが急に顔を上げて俺の方を見た。
驚いた顔をした後に、今度は泣きそうな顔をする。
俺のこと心配してくれてたんだな。
「いや〜、ようやく惚れてもらえたみたいでよかったわ〜。体張った甲斐があったな〜。」
そう言って俺はあいつを安心させるように笑った。
『おそ…松くん?』
あいつが震える声で俺の名前を呼ぶ。
「ん?なになに?急にそんな呼び方されるときゅんとしちゃうんだけど。もしかしてお兄ちゃんいなくて寂しかった〜?可愛いな〜♡」
いつもの調子でそう話すとあいつの表情はみるみる真顔になっていき、
『あっ、なんでもないです。キモイんでやめてもらえますか。』
いつものような辛辣な言葉を俺に放つ。
「ちょ、そこもっとおそ松くぅん!!って抱き着いたりするところじゃないの!?なんでそんな平然と引けるの!?やめてよ俺今体傷だらけなんだからさ!心まで傷つけんなよ!!」
俺はそう言ったものの、その言葉があいつの本心じゃないことくらい、気づいてる。
弟たちよりも表情は変わらないし、演技もうまいからわかりずらいけど
それでも、よくわかる。本当は泣きそうなくらい喜んでるってことくらい。
素直じゃねーな、なんて思っていると
『…おはよう。』
そう言ってあいつは少し微笑みながら俺の頭を撫でた。
あー、やっば。俺今ちょー幸せかも。
「えっ、なに!?怜ちゃんちょーイケメンじゃん!!思わずきゅんとしちゃった!」
『…あれ。名前間違えてない…?』
思わずビクッと体を跳ねさせてしまう。
あいつは勘が鋭いから気づくかもしれない。
俺は本当はちゃんと名前を憶えてて、
それでもちゃんと名前を呼ばなかったのは名前を呼ぶのが恥ずかしかったからだって。
自分でも思春期じゃあるまいしと思ってるけど
どうしても恥ずかしさが勝ってしまっていつもまともに呼べなかった。
今なら勢いでいけるかと思ったんだけどな〜…。恥ずかしさで気がおかしくなりそう…。
『あれれ〜?一体どうしたのかな〜?いつも名前間違えてたのにどうして急にちゃんと呼び始めたのかな〜?あっれれ〜?』
そんな俺を見たあいつはこれでもかと煽る。
散々俺のことをからかうとあいつは病室から出て行く。
「えっ、帰っちゃうの!?なんで!?もっと感動のシーンじゃないのここは!?」
『私に泣いてほしいのならばさっさと傷を治せ。ばか。』
あいつは振り返らずにそう言った。
36人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
キル坊(プロフ) - rainbow204649さん» はい!早速書かせていただきました…!いろいろ書きすぎておろそかになってしまっていたところもあったので、やる気になれるいいチャンスでした!ありがとうございます! (2022年11月30日 21時) (レス) id: a4a1b981d8 (このIDを非表示/違反報告)
rainbow204649(プロフ) - いえ、怒ってませんよ。 (2022年11月30日 20時) (レス) id: d0a66fb317 (このIDを非表示/違反報告)
キル坊(プロフ) - rainbow204649さん» すみません、チョロ松の番外編はこれからなんです…!お待たせしてしまって申し訳ございません!なるべく早く書けるように頑張ります…! (2022年11月30日 16時) (レス) id: a4a1b981d8 (このIDを非表示/違反報告)
rainbow204649(プロフ) - チョロ松 番外編はないんですか? (2022年11月30日 16時) (レス) id: d0a66fb317 (このIDを非表示/違反報告)
ポチ - ありがとうございます!嬉しいです!感謝してます。楽しみに待ってますね。 (2022年10月6日 16時) (レス) id: 07a8a54005 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:キル坊 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/okitakarum1/
作成日時:2022年9月19日 16時