story17 ページ25
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「いや〜、気持ちよく平らげてくれてありがとう!」
「………」
食後のお茶を俺の前に置きながら、女は嬉しそうに笑う。
そう、ひと口食べたあとは、もうだめだった。
止まることなど知らないかのように、なし崩しに他の料理も夢中で食べてしまったのだ。
こんなに料理を旨いと感じたのは、いつぶりだろうか。
「気に入ってくれた?」
「……まぁ、不味くはない」
素直に返すことなどできず、ふいと顔を背けながら答えれば、女は目を丸くしたあとまた嬉しそうに笑う。
「ふふ、ありがとう!いつでも食べに来て」
「…フンッ。そんな簡単に言っていいのかよ。いくら同じ組織だからって…」
「大丈夫!私の料理を美味しいと言ってくれた人に悪い人はいないわ!」
「……美味いとは言ってねぇし、そもそもこの組織には悪い奴しかいねぇ」
なんなんだこいつは。能天気にも程があるだろう。
「ふふふ。改めてよろしくね!」
「おい女、人の話を聞け」
「ギムレットだってば。ねぇ、あなたは何の
楽しみね。
そう言って不思議な女…ギムレットは、チョコレート色の瞳を柔らかく細めた。
□■□■□■□■□■□
「…アニキ!奴が入国しました…!」
バタンッ、と強い音と共にウォッカが部屋に転がり込んできて、そこでようやく意識が浮上した。
どうやら自室のソファでうたた寝をしていたようだ。
「……」
「…アニキ?」
「…聞こえてる。奴が入国したって?」
「へい。アニキが言ってた…グラッパって奴、今度の殺しの件でラムが日本へ呼んだらしいですぜ」
チッと思わず舌打ちが出る。
よりによってこのタイミングとは、嫌な予感しかしない。
「…大したことねェ殺しだろ。さっさと終わらせて、奴を英国へ送り返せ」
「へ、へい。…でもアニキが警戒するなんて、そんなにやばい奴なんですかい?俺会ったことなくて…」
チラリ、と視線だけでウォッカを見やって、ローテーブルの上の煙草とライターを手にした。
「…奴のやり方が好かねぇだけだ」
「…やり方…?」
シュボッ、と音を立ててライターから火が上がる。
「…奴…グラッパは…気に入った女を殺して、火をつけちまう」
「!?」
「…ただのイカれたクソ野郎だ」
揺らめく炎を見つめながら、その赤の向こうに一瞬だけ柔らかなチョコレート色の瞳が見えた気がした。
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kaoru(プロフ) - 一気読みしました!ぱぱんださんの赤井さん格好いいし、降谷との絡みが面白すぎる!!更新楽しみにしてます! (2020年7月9日 0時) (レス) id: ecb16dd86f (このIDを非表示/違反報告)
akithin.(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2020年5月23日 14時) (レス) id: 58267e955c (このIDを非表示/違反報告)
壟薇 - とても面白いです!更新再開待ってます! (2019年12月6日 15時) (レス) id: ebdf59309e (このIDを非表示/違反報告)
玄ちゃん(プロフ) - 初めまして(*^^*) 面白そうで最初から全て読みました! 更新が再開されるのを楽しみに待ってます(≧∇≦) (2019年11月2日 18時) (レス) id: b03705665b (このIDを非表示/違反報告)
grenouille(プロフ) - お久しぶりです!なかなかタイミングがなくて、すっかり時間が経ってしまいましたが、やっぱり、ぱぱんださんの作品好きです(^^)また、更新お待ちしてます(o^^o) (2019年8月18日 19時) (レス) id: 390c91a8c5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぱんだ | 作成日時:2018年12月2日 16時