story87 ページ42
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驚いていたAは、俺の言葉が府に落ちたのか、泣きそうな顔で笑った。
「…私…両親の顔も、ろくに覚えていなくて…だから余計に、こんな傷痕でも…両親との唯一の繋りのように思っていたのかもしれません…」
「…そうだな。だからもう、醜いだなんて言ってやるな」
そう言って、俺は火傷の痕にそっと口付けを落とす。
Aは驚いたものの、もう嫌がりはしなかった。
「…秀一様…ありがとうございます…」
「礼を言われるようなことはなにもしていないさ。…それよりほら、呼び方はどうしたんだ?」
「あ。…秀一、さん…でしたね」
「呼びすてでもいいんだぞ?」
「それは無理です…!」
それは残念だ、と言いながら額に、頬に、首筋にキスを落としていく。
「…しゅ、秀一さん…っ」
「ん?」
真っ赤になって、慌てるAにわざと何てことのないように返事をしながら、あちらこちらにキスを落とす。
「…その…えと…きょ、今日は泊まりですか…っ?」
「Aが、許してくれるのなら」
「…ぅ…ず、ずるい…」
意地悪く笑っていえば、頬を染めたままのAは、不服そうにこちらを睨んでくる。
そんなもの、煽ってるようにしか見えないけれど。
「…A…俺はAの全てを、俺のものにしたい。今更焦りはしないから、Aが待って欲しいと言うのならいくらでも待つが…どうだ?」
そっと頬を撫でて羞恥に濡れた瞳を見つめれば、Aは知らなかったんですか?と、やわらかくいとおしげに笑った。
「出会った時からずっと、私の全てはあなたのものですよ」
あぁ、やっぱりAには敵わない。
いつだって俺の欲しいものを、欲しい言葉をくれるのだ。
そうして、今度はその心ごと。
「…とんだ殺し文句だな」
微笑んで、口付けて。
そのまま抱き抱えて寝室へと移動する。
そっとベッドに下ろして、その瞳を見つめれば、あまりのいとおしさに、愛してる、と自然と言葉がこぼれ落ちた。
何度言っても、この想いには足りない。
そう思いながら、優しく甘いキスを繰り返して、Aのやわらかな熱に溺れていく。
手離せないのなら、近くにおいて何からも必ず守ってみせよう。
このいとおしいぬくもりを、両腕に抱きしめて。
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ぱぱんだ(プロフ) - カコさん» いつもありがとうございます!最高と言ってもらえて、本当に嬉しいです(*^^*)基本的にハピエン好きなので、読んだあとほっこりしたいじゃないですか(笑)優男の方もぜひ、お願いしますね! (2018年4月9日 21時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
カコ - いや〜もう最高でした。ぱぱんださんの作品は読後に幸せな気持ちになれて好きです。今回もありがとうございました。これから安室の続編読みま〜す。 (2018年4月9日 20時) (レス) id: 667d573e94 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - 智真さん» こちらこそ、読んで下さってありがとうございました(*^^*)楽しんで頂けたようで、とても嬉しいです!これからの執筆の糧にさせていただきますm(__)m (2018年4月9日 18時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
智真(プロフ) - 完結おめでとうございます!赤井さんイケメンすぎるし、降谷さん優しすぎるし、キュン死しそうに何度もなりました笑 公安メンバーとのやり取りも凄く好きで、とにかく面白かったです!!素敵なお話ありがとうございました(≧∀≦) (2018年4月9日 16時) (レス) id: 809fa61cec (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - みーさん» ありがとうございます(*^^*)楽しみにして下さって、とても嬉しいです!おかげさまで無事に完結できました(*^^*) (2018年4月9日 6時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぱんだ | 作成日時:2018年3月2日 11時