story86 ページ41
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「…A。俺は火傷の痕があろうとも、君に対するこの気持ちは変わらない。Aにとっては気にかかることかも知れないが、正直俺は気にならない」
「……ですが……」
よほど彼女にとって、その火傷の痕がネックなのだろう。
俯くAの頭をそっと撫でながら、ふむ、と少し考える。
「…A、じゃあその痕を見せてくれないか?」
「え…っ?」
驚きで思わず顔をあげるAの唇に、軽くキスを落としながらパジャマのボタンに手をかける。
「ちょ、ちょっと待って下さい…!」
「だめだ。どのみちAの全部は俺が見ることになるんだから、構わないだろう?」
「何言ってるんですか…!」
真っ赤になってあわあわと逃げようとするAの体をしっかりと抱き抱えて、ひとつふたつとボタンを外していく。
「無理!無理です…!恥ずかしい…っ」
「大丈夫だ。何度も寝た仲だろう?」
「それは…っ」
羞恥で涙ぐむAの目尻にキスを落としながら、そっと右腕のパジャマを脱がせば、Aはぎゅっと目をつむって縮こまった。
確かに、そこには古い火傷の痕があった。
白い肌に、ひきつれた痕が痛々しい。
Aはすごく醜いと言ったが、俺からすればそれは痛々しいと思いこそすれ、醜いなどとは決して思えなかった。
そっとその痕を撫でれば、Aはびくりと体を震わせる。
「…痛かったか?…熱かったか…?」
自然と眉根が寄るのがわかる。
当時まだ3歳だったAが、火災に巻き込まれ、泣いている姿を想像してしまったのだ。
俺の言葉に、Aは驚いたように瞬いて少し考えたあと、首をかしげる。
「…まだ幼かったですし、火傷を負った時のことはよく覚えていないんですよね…」
熱いとか苦しいとか夢の中のイメージしかないのだ、とAは言う。
「…どうしても気になるなら、本当は整形手術でも何でも、すればよかったんです…この痕を理由に、素直になれないくらいなら…」
でも、何故か踏みきれなくて。そう俯くAの頬に手をあてて、上を向かせる。チョコレート色の瞳と視線が絡む。
「…それは無理だろう。だってこれは、Aが最期まで両親と共にいた証なのだから」
「…!」
驚きに見開かれた大きな瞳が、俺をうつして揺れる。
こんなにも悩んでいたのなら、もっと早く気付いてやればよかった。
そう思いながら、そっと頬を撫でる。
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ぱぱんだ(プロフ) - カコさん» いつもありがとうございます!最高と言ってもらえて、本当に嬉しいです(*^^*)基本的にハピエン好きなので、読んだあとほっこりしたいじゃないですか(笑)優男の方もぜひ、お願いしますね! (2018年4月9日 21時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
カコ - いや〜もう最高でした。ぱぱんださんの作品は読後に幸せな気持ちになれて好きです。今回もありがとうございました。これから安室の続編読みま〜す。 (2018年4月9日 20時) (レス) id: 667d573e94 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - 智真さん» こちらこそ、読んで下さってありがとうございました(*^^*)楽しんで頂けたようで、とても嬉しいです!これからの執筆の糧にさせていただきますm(__)m (2018年4月9日 18時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
智真(プロフ) - 完結おめでとうございます!赤井さんイケメンすぎるし、降谷さん優しすぎるし、キュン死しそうに何度もなりました笑 公安メンバーとのやり取りも凄く好きで、とにかく面白かったです!!素敵なお話ありがとうございました(≧∀≦) (2018年4月9日 16時) (レス) id: 809fa61cec (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - みーさん» ありがとうございます(*^^*)楽しみにして下さって、とても嬉しいです!おかげさまで無事に完結できました(*^^*) (2018年4月9日 6時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぱんだ | 作成日時:2018年3月2日 11時