story84 ページ39
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ピンポン、とインターホンを鳴らす。
もう夜も深くて、しんとした空間にやけにその音が大きく響いた。
こんな時間に女性の部屋を訪れるのはいけないと思いつつも、はやくAに会いたくて来葉峠の一件のあとそのまま彼女のアパートへと直行したのだ。
……命からがら。
参った。本当に、何だったんだあれは。
何だってAは、日本警察…しかも公安の連中と知り合いなんだ。
そもそも、あれは知り合いというより、まるでアイドルやマドンナのような扱いじゃないか。
先程の彼らの殺気立った目を思い出して、思わず冷や汗が伝った。
正直Aに聞きたいことは山ほどあるが、今はそれは置いておこう。
とにかくAとの約束を果たさなくては。
インターホンを押してしばらくすると、扉の向こうからどちら様ですか?と控えめな声が聞こえてきた。
さすがにこの時間だ。Aも警戒しているらしい。
「…A、俺だ。開けてくれないか?」
来葉峠から直行したので、もちろん変装なんてしていない。
赤井秀一そのままの声で答えれば、慌てたように鍵を開ける音が聞こえた。
「…秀一様…っ!?」
勢いよく開いた扉から、パジャマ姿のAが飛び出してくる。
「おっと。…こんな時間にすまないが、中へ入れてくれないか?あまりこの格好で外にいるのはまずくてね」
Aを軽く抱きとめてそう言えば、彼女は更に慌てたように中へと俺を引き入れてくれた。
リビングのソファに並んで座れば、Aはじっと俺を見つめてきて。
「…本当に、秀一様なんですね…?」
「あぁ。ちゃんと生きてるよ」
すまなかった、そう言ってもう一度今度はしっかりと抱きしめれば、Aは大粒の涙をはらはらとこぼす。
「…っ、よか、よかった…秀一様…生きて…」
「あぁ。たくさん悲しませて、悪かった」
謝って済むことではないけれど。そう言えば、Aはふるふると首を振って、ぎゅう、とすがりついてきた。
このぬくもりが、いとおしくてたまらない。
今回のことでよくわかった。
どんなご託を並べようとも、俺はAを手離したくないし、手離せない。
ずっとそばで、こうしていつでも抱き締められる距離にいたい。
ぐすぐすと泣くその背を優しく撫でていれば、しばらくして少し落ちついた様子のAが、口を開いた。
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ぱぱんだ(プロフ) - カコさん» いつもありがとうございます!最高と言ってもらえて、本当に嬉しいです(*^^*)基本的にハピエン好きなので、読んだあとほっこりしたいじゃないですか(笑)優男の方もぜひ、お願いしますね! (2018年4月9日 21時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
カコ - いや〜もう最高でした。ぱぱんださんの作品は読後に幸せな気持ちになれて好きです。今回もありがとうございました。これから安室の続編読みま〜す。 (2018年4月9日 20時) (レス) id: 667d573e94 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - 智真さん» こちらこそ、読んで下さってありがとうございました(*^^*)楽しんで頂けたようで、とても嬉しいです!これからの執筆の糧にさせていただきますm(__)m (2018年4月9日 18時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
智真(プロフ) - 完結おめでとうございます!赤井さんイケメンすぎるし、降谷さん優しすぎるし、キュン死しそうに何度もなりました笑 公安メンバーとのやり取りも凄く好きで、とにかく面白かったです!!素敵なお話ありがとうございました(≧∀≦) (2018年4月9日 16時) (レス) id: 809fa61cec (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - みーさん» ありがとうございます(*^^*)楽しみにして下さって、とても嬉しいです!おかげさまで無事に完結できました(*^^*) (2018年4月9日 6時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぱんだ | 作成日時:2018年3月2日 11時