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『…そうですね……あの、私が勝手に思っていることなんですが…』
怒りませんか?と遠慮がちにAさんはいう。
Aさんは、俺が怒るような関係だと思っているんだろうか。
「…たぶん大丈夫です。どうぞ」
『…たぶんなんですね…』
くすり、と笑う声が耳をくすぐる。
『…あの、保護者みたいな友人かな、と思っていました…』
保護者みたいな友人。
これはまた予想していなかった回答だ。
彼女は俺のことを、そんな風に思っていたのか。
何だか無性におかしくなって、思わず笑みがこぼれる。
「…何ですか、保護者みたいな友人って…それ、ただの世話焼きな友人じゃないんですか?」
『…うーん…ただの世話焼きというより、やはり保護者の方がしっくりくるんですよね。とても大事にして下さってるの伝わりますから…だから私も、信頼してますし…つい相談したり頼ってしまいがちですけど…』
そうか。保護者みたいな友人も、悪くない。
あの男にはまず、立てないポジションだ。
「では、俺からしたらAさんは世話の焼ける友人ってことですね」
『…困りました。基本的に人のお世話をすることが仕事なのに…』
「はは!いいんじゃないですか?たまには自分の世話を焼く人間がいたって」
『ふふ。それもそうですね』
きっと、あの男には話せないことでも、友人になら話せることもあるだろう。
あれこれと世話を焼いても、保護者みたいな友人なら、許されるだろう。
そう思って、これからも彼女のそばにいてもいいのだろうか。
「…Aさん。これからもこうして、そばにいてもいいですか?」
『…友人なら、離れる必要はないのでは?』
それもそうか。恋人ができようが、何があろうが、友人は友人だ。離れる必要はない。
「…それもそうですね。ありがとうございます。すっきりしました」
『?…はい…』
「では、保護者みたいな友人として助言をひとつ。…今度は、引け目なんて感じて遠慮してはだめですよ。自分の気持ちに素直になって、決して離さないように」
『…?零さん、それは…?』
「いずれわかります。ではまた」
まだ首をかしげているであろうAさんをそのままに、一方的に電話を切った。
さて、行こうか。
世話の焼ける友人のために、この世で最も憎たらしい男の元へ。
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ぱぱんだ(プロフ) - カコさん» いつもありがとうございます!最高と言ってもらえて、本当に嬉しいです(*^^*)基本的にハピエン好きなので、読んだあとほっこりしたいじゃないですか(笑)優男の方もぜひ、お願いしますね! (2018年4月9日 21時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
カコ - いや〜もう最高でした。ぱぱんださんの作品は読後に幸せな気持ちになれて好きです。今回もありがとうございました。これから安室の続編読みま〜す。 (2018年4月9日 20時) (レス) id: 667d573e94 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - 智真さん» こちらこそ、読んで下さってありがとうございました(*^^*)楽しんで頂けたようで、とても嬉しいです!これからの執筆の糧にさせていただきますm(__)m (2018年4月9日 18時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
智真(プロフ) - 完結おめでとうございます!赤井さんイケメンすぎるし、降谷さん優しすぎるし、キュン死しそうに何度もなりました笑 公安メンバーとのやり取りも凄く好きで、とにかく面白かったです!!素敵なお話ありがとうございました(≧∀≦) (2018年4月9日 16時) (レス) id: 809fa61cec (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - みーさん» ありがとうございます(*^^*)楽しみにして下さって、とても嬉しいです!おかげさまで無事に完結できました(*^^*) (2018年4月9日 6時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぱんだ | 作成日時:2018年3月2日 11時