story17 ページ19
.
「だって、旦那様がいらっしゃらない今は、秀一様が御主人様ですよね？」
長男ですし、と言うAに思わず頭を抱えたくなる。
「そうかもしれんが、そうじゃないだろう？」
「私ったら、気付かずに失礼を致しました…」
「だから、そうじゃない。それに、そんなの端から聞いたらいろいろと誤解を生むだろう」
「…そうですか？」
俺の腕の中で首をかしげるAに、はぁ、と再び深いため息をつく。
「とにかく、御主人様はやめてくれ。そして、そんなの人に言うんじゃないぞ」
「…はぁ…わかりました」
何故？という疑問が抜けきらないのか、曖昧に頷くAに不安が残る。
あぁもう、これじゃ秀一様呼びの方がまだマシだったな。
わずかに後悔していると、腕の中のAが俺を見上げて。
「もしかして…秀一さん、ですか？」
「！」
急に俺が求めいたものがやってきて、思わず息を飲む。
「…あ、あぁ。そうだ、それがいいと思うんだが」
動揺しつつもひとつ頷いてAの頭を撫でれば、彼女は嬉しそうに笑って。
「やっぱり！様付けは固いから、と言われたんですよ。秀一様も、そう思ってらしたんですか？」
「あぁ、実はそうなんだ……って、誰に言われたんだ、それ」
危うく聞き流すところだったが、様付けをやめろと誰かが言ったということか？
誰がって、だいたい察しはつくが、一応の確認だ。
「そのお客様です」
だろうな！その優男だと思ってたさ！
あぁ、くそ。
顔も知らないその男が憎くてたまらない。
こっちが二十数年もかけてしていることを、あっさりやってのけやがって。
「…A、その男の名前と職場を教えるんだ」
「…え？」
「素行調査してやる。どんな男なのか、その面拝むまでは気が済まない」
「ちょ、ちょっと何言ってるんですか！いくら秀一様でも、お客様の個人情報はお話できません…！」
「なら、調べるまでだ」
「秀一様…！」
「ほら、呼び方も戻ってるぞ」
「しゅ、秀一さん…あぁ、だめです。やっぱり慣れません…！」
「いいから慣れろ」
「そんな…！」
それからAに呼び方の練習をさせたものの、なかなか上手くいかず。
俺としてはその優男に遅れを取っているようで、すぐにでも呼び捨てにさせたかったのだが、Aがどうしても嫌がるので、仕方なく徐々に慣れていってくれればと、とりあえずは"様とさん"がごちゃまぜな呼び方に落ち着いたのだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1040人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぱぱんだ(プロフ) - 桜桃さん» 夢主は警備企画課はアイドルみたいになってますからね(笑)赤井さんの悩みの種が増えること間違いなしです(笑)風見さん好きなので出せて良かった…！(*^^*) (2018年3月1日 10時) (
レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
桜桃 - 赤井さんが夢主のモテモテぶりを見たら、きっと血相を変えるでしょうね(笑)風見さん達が青春真っ盛りの少年見たいでカワイイ(*´ω｀*) (2018年3月1日 10時) (レス) id: c7f2d52cbe (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - 桜桃さん» 赤井さんは子供のころからイケメンであってほしいイメージです(笑) (2018年2月26日 12時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
桜桃 - 番外編読みました。赤井さんは子供の頃からカッコイイ！ (2018年2月26日 12時) (レス) id: c7f2d52cbe (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - えりさん» こちらこそ、ありがとうございます(*^^*)正直、嫉妬する二人は書いていて楽しいです(ひどい) (2018年2月23日 0時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぱぱんだ
| 作成日時：2018年2月10日 7時
