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「ずいぶん濡れてらっしゃいますね。勝手をして申し訳ないと思ったのですが…ご帰宅時間に合わせてお風呂を入れておきました。もうじき調理も終わりますので、温まってきてはいかがでしょうか?」
「…え、あ…ありがとうございます」
まさか温かいお風呂まで用意されてるとは。
タオルを受取りつつ、Aさんの心遣いに感謝し、そのまま風呂場へと直行した。
温かな湯船に体を沈ませれば、荒んだ心もほぐれていくようだ。
あぁ、湯船につかったのもいつぶりだろうか。
ひとりではついシャワーで済ませてしまって、こんなにゆっくりお風呂に入ったのは久しぶりだ。
Aさんに出会ってからわずか数時間なのに、ずいぶんと久しぶりな体験ばかりしている気がする。
不思議な人だ。
初めて会ったのに、まるで昔馴染みといるかのような安心感。
何も言わなくても、こちらが欲しいものさっと出してくれて、それがまたわざとらしくなくて自然体だ。
一緒にいるのがとても楽な人、とでも言おうか。
そしてあの、やわらかなふんわりとした笑顔。
確かにこれは癒される…そう思いながら、ほぅ、と吐き出した息は揺らめく湯気の中に消えていった。
「お待たせ致しました」
お風呂から上がった俺を待ち受けていたのは、栄養バランスのとれた美味しそうな食事だった。
しかも男の一人暮らしでは、なかなかお目にかかれない和食。
魚の煮付け、具だくさんの煮物、青菜のおひたし、だし巻きたまごなど、どれも美味しそうで食欲をそそるいい匂いがしている。
「いただきます」
思わず、きちんと手を合わせて挨拶をする。
まずはお味噌汁をひと口。
うわ、旨い。鼻を抜ける出汁の香りがまたいい。
次いで魚の煮付けもひと口。
あぁ、だめだこれ。
「旨すぎる…」
「お口に合ったようで、ようございました」
思わずこぼれた呟きに、Aさんはふんわりと頬笑む。
煮物も、おひたしも、たまご焼きも。どれを食べても旨いという言葉にしかできなかった。
美味しくてあたたかくて、無性に泣けてくる。
料理を食べてこんなに感動したのは初めてだ。
「本当に旨いです。こんなに旨いの、初めて食べました」
「まぁ、ありがとうございます。…降谷様、お腹がいっぱいになれば、不思議と元気が出てくるものです。たくさん召し上がって下さいね」
そう微笑んで、彼女はまたキッチンへと戻っていく。
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ぱぱんだ(プロフ) - 桜桃さん» 夢主は警備企画課はアイドルみたいになってますからね(笑)赤井さんの悩みの種が増えること間違いなしです(笑)風見さん好きなので出せて良かった…!(*^^*) (2018年3月1日 10時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
桜桃 - 赤井さんが夢主のモテモテぶりを見たら、きっと血相を変えるでしょうね(笑)風見さん達が青春真っ盛りの少年見たいでカワイイ(*´ω`*) (2018年3月1日 10時) (レス) id: c7f2d52cbe (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - 桜桃さん» 赤井さんは子供のころからイケメンであってほしいイメージです(笑) (2018年2月26日 12時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
桜桃 - 番外編読みました。赤井さんは子供の頃からカッコイイ! (2018年2月26日 12時) (レス) id: c7f2d52cbe (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - えりさん» こちらこそ、ありがとうございます(*^^*)正直、嫉妬する二人は書いていて楽しいです(ひどい) (2018年2月23日 0時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぱんだ | 作成日時:2018年2月10日 7時