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早速キッチンに立つAさんを眺めながら、あいつら料理だけが目当てだったわけじゃないな、と確信する。
正直、料理上手な家政婦というから、食堂のおばちゃんのような人を想像していたのだ。
ところがやって来たのは、上司の表現がぴったり合うような、やわらかな雰囲気の癒し系美人。
これで料理も上手いとなれば、あいつらがこぞって依頼するのも頷ける。
「今日は1週間分の作りおき料理をさせていただきますが、志田様から降谷様はお忙しい方だとお伺いして…家に帰れないことも多々あるとのことでしたので、半分は冷凍保存が可能な料理にさせて頂こうかと思うのですが…いかがでしょうか?」
「あ、はい。それでお願いします」
「かしこまりました。今夜の分は今日召し上がりますか?」
「えぇ。今日は大丈夫です」
「承知しました。では、今夜の分はすぐ召し上がれるように致しますね」
そう言ってAさんは翡翠色の石がついたバレッタで長い髪をひとまとめにし、持参していたエプロンを付けて調理を開始した。
その手際は惚れ惚れするほど無駄がなく、流れるように動く彼女の手を思わず凝視してしまったほどだ。
そうやって半ば感心した思いでリビングからAさんを眺めていたら、俺のスマホが着信を告げて震える。相手はベルモットだ。
今日は1日休みのつもりだったのに、と思わず舌打ちをしたいのをこらえて電話に出る。
内容は大したものではなく、迎えに来てほしいとの電話だった。俺はお前の運転手じゃないと思いつつも、わかりました、と電話を切る。
「すみません、所用で少し出なければならなくなって…30分ほどで戻る予定ですが…」
「かしこまりました。では、このまま調理を続けておりますね」
「はい。お願いします」
「行ってらっしゃいませ」
特に見られて困るような物も置いていないので、彼女を残して部屋を出た。
行ってらっしゃい、なんて言われたのはいつぶりだろうか、と思いつつ。
ベルモットの運転手を終えて、予定時間通りに帰宅できたのはよかったのだが、外はひどい雨で。
急な呼び出しに加え、濡れ鼠になり、冷えた体を引きずるようにして帰る。
最悪だ。あの女の呼び出しにいいことはひとつもない。
「お帰りなさいませ」
「…ただいま戻りました」
行く時同様、おかえりと言われたのもいつぶりだろうか。
タオルを持ったAさんのやわらかな声に出迎えられた。
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ぱぱんだ(プロフ) - 桜桃さん» 夢主は警備企画課はアイドルみたいになってますからね(笑)赤井さんの悩みの種が増えること間違いなしです(笑)風見さん好きなので出せて良かった…!(*^^*) (2018年3月1日 10時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
桜桃 - 赤井さんが夢主のモテモテぶりを見たら、きっと血相を変えるでしょうね(笑)風見さん達が青春真っ盛りの少年見たいでカワイイ(*´ω`*) (2018年3月1日 10時) (レス) id: c7f2d52cbe (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - 桜桃さん» 赤井さんは子供のころからイケメンであってほしいイメージです(笑) (2018年2月26日 12時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
桜桃 - 番外編読みました。赤井さんは子供の頃からカッコイイ! (2018年2月26日 12時) (レス) id: c7f2d52cbe (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - えりさん» こちらこそ、ありがとうございます(*^^*)正直、嫉妬する二人は書いていて楽しいです(ひどい) (2018年2月23日 0時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぱんだ | 作成日時:2018年2月10日 7時