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episode7 ページ9

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それに気付かないふりをして、今度は目尻に口づけを落とす。


「このアメジストの瞳も、とても綺麗で好きです」


そう言ったら、今度ははっきりと彼女は顔を歪めた。


「……私は嫌いよ。この髪も、目も。少しも好きになれない」


初めて聞く、ひどく冷たい声だった。


「……何故です?」

「………さぁ、なんでかしら。あぁでも、そうね。私もバーボンみたいなアイスブルーの瞳がよかったな」


晴れた日の空みたいで綺麗ね、そう言って彼女は笑った。
影は一瞬で潜め、いつもの屈託のない笑顔だ。


「さ、もう寝ましょ。バーボン明日はベルモットと一緒でしょう?絶対こき使われるよ」

「…確かに、そうですね」


苦笑を返すと、おやすみなさい、と言って彼女は早々に目を閉じた。


「…おやすみなさい…」


そっと瞼に口付けて。彼女を優しく抱き締める。
どうやら、今夜は逃げられてしまったようだ。
この腕の中にいるのに、まるでここにいないかのような錯覚に陥る。
それを不安に思ったのは、思いの外、俺自身が彼女に惹かれているせいだろうか。


それに、さっきのアリアの様子がひどく気になる。
彼女が初めてこぼした、本音のように聞こえた。
アリアは美しい人だ。あまり自分に頓着していないようだが、大抵の人間はその髪も瞳も美しいと評するだろう。
けれど本人は、自分の髪も瞳も嫌いだという。
それは単純に、見目だけの問題ではない気がする。
一体どういう意味なんだろうか。

きっとこれは、俺が欲しい有用な情報とは違うだろう。
それなのに何故か気になって仕方がない。
彼女の本心に、触れたい。




偽りだらけの俺が、望んではいけないものなのかも、知れないけれど。






「…晴れた日の空みたい、か…」







暗闇にそっと落ちた呟きは、彼女に聞こえただろうか。






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ぱぱんだ(プロフ) - grenouilleさん» そんな風に言っていただけて、本当に嬉しいです…!これからも素敵な二人をお届けできるように(笑)頑張ります!(*^^*) (2018年4月27日 5時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
grenouille(プロフ) - ぱぱんださんの作品読んでると、浮気というより本気になりそうな自分がいます(笑)そのくらいぱぱんださんの書く赤井さんと降谷さんが大好きです(o^^o)ほぼ毎日、ぱぱんださんの作品読んでときめいて癒されてます(*≧∀≦*)応援してます! (2018年4月26日 23時) (レス) id: 9364f4193b (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - grenouilleさん» はじめまして、同志さん!!(笑)わー!嬉しいです(*^^*)一緒に浮気していきましょうね!(笑)更新頑張ります! (2018年4月26日 23時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
grenouille(プロフ) - はじめまして!私もアラサー、既婚者、赤井さんと降谷さんに浮気中なので、親近感を持って読ませて頂いてます(笑)優男シリーズにハマって、他の作品も拝読しました!ぱぱんださんの作品大好きです(o^^o)更新楽しみにしてます! (2018年4月26日 15時) (レス) id: 9364f4193b (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - cherryさん» わぁ、ありがとうございます!こんなに長文で感想をいただけるなんて、とても嬉しくて感動しました(*^^*)まだまだ拙い文章ですが、ご期待に添えるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いします! (2018年1月14日 1時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱぱんだ | 作成日時:2017年12月24日 18時

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