優男がお好き【安室・降谷/赤井】

episode11 ページ13

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太陽が消えた部屋は、ひどく暗くて冷たい。
もう勝手にこの部屋を集合場所にする人達もいないし、誰かの笑い声も聞こえない。


スコッチは、ライの手によって始末されたというのが公の報告だった。
直後のその場に居合わせたらしいバーボンも、当事者であるライも多くは語らなかった。
ただはっきりとわかったのは、バーボンがひどくライを憎んだということ。
そしてライも、それを甘んじて受け入れたということだ。


だから私は、わかってしまった。
ライが…赤井さんが、スコッチを始末したわけではないこと。バーボンもそれを承知の上で、彼を憎んでいること。


スコッチを失ったあと、喪心したバーボンは私のところへやって来た。
何かにすがるように私を抱きながら、名前で呼びたい、と。
コードネームは嫌だと言って、名を問うてきた。
だから私は答えたのだ、A、と。
あのときの彼に対して、偽名を使うという選択肢はなかった。
それを彼も感じとったのか、自分の名前は、零、だと言った。
お互いに、とても危うい橋を渡ったに違いない。
けれども構わなかった。
あの日太陽が消えたことを、彼と共に悲しむことができたのは、私だけのようだったから。


そして、狂い始めた歯車はどんどんと壊れていく。
次いで、ライがNOCであることがバレて彼も組織を追われた。
生きていることが幸いだけれど、バーボンとの亀裂は更に深いものとなった。
その後、宮野明美がジンに殺されたと聞いて、真っ先に赤井さんの心配をした私は、ひどい女だと思う。


彼は私もFBIだと知ったら、嫌悪するのだろうか。
そうしたらきっと、私のこの想いは行き場を無くしてしまう。
もう誤魔化しようがないほど、彼が…零が好きなのに。

彼が大切なものを喪った時、私を頼ってくれたことが嬉しかった。
彼の声が名前を呼んでくれたことも、嬉しかった。
あの日から、二人きりの時は名前で呼んでくれて。
そのことがまるで、とても特別なことのように思えた。

そして同時に、恐ろしかった。
いつか…偽りだらけの自分は、彼に捨てられてしまうのではないか、と。
そもそも、ハニートラップで恋人をやっていたのだ。彼にとって有用な情報がなければ、いつ別れを言われてもおかしくはない。




そう思いながらも、彼と恋人となってもう4年が経とうとしていた。





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